新連載・鈴木康弘の「DX人材」の育て方 第1回 ”D”は進めど”X”は進まず?

鈴木 康弘 ((株)デジタルシフトウェーブ代表取締役社長)
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DX(デジタルトランスフォーメーション)――。「デジタル技術を活用した変革」を指すこの言葉はコロナ禍を経て急速に浸透し、各メディアで見聞きしない日はないほどの市民権を得るに至りました。しかし、具体的な成果や変革の事例はまだ乏しいにもかかわらず、「DX」という言葉だけが独り歩きしている感も否めません。「DXを実現するためには、DXの意味を真に理解したうえで、変革を促す”人材”を育てることが重要」――。こう力を込めるのは、かつて流通大手セブン&アイ・ホールディングスでオムニチャネル化の旗振り役を務め、現在は㈱デジタルシフトウェーブの代表取締役社長として各企業のDX支援を行う鈴木康弘氏。本連載では「DX人材」の育成手法と、その前提となる組織づくりやDXに対する向き合い方など、さまざまな切り口でDX実現のためのヒントを鈴木氏に提言してもらいます。

流行語化する「DX」という言葉の真の意味

 2022年を迎え、多くの企業は変化を求められています。その1つとして挙げられるのが「DX」です。DXとはDigital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略称であり、Digitalの“D”と、Transformation(変容、変革)の接頭辞であるTrans(~を超える・横切るといった意味)が英語では”X”と表記されることがあることから、「DX」の2文字で表されるようになりました。

DXとは?

 2020年からコロナウイルスが蔓延し、私たちの生活は一変しました。外出を控え、在宅で仕事をすることが当たり前になりました。同時にリモートワークが一気に普及してデジタル化が一気に加速し、DXという言葉がメディアなどを通じて広まっていったのです。

 企業のDXを日々支援している私も、各領域でDXの動きが加速していることを実感しています。2020年から2021年の2年間、100回を超える講演や勉強会に呼ばれ、DXに関する話をさせていただきました。2020年前半は「コロナ禍におけるリモートワークの在り方」といったテーマが多かったのですが、同年後半になると「DXとは何か?」、2021年に入ると「DXへの具体的な取り組み方法」、そして最近では「DX組織・人材の育成」というテーマでの講演依頼が増えてきました。このことからも、DXという言葉が浸透し、最近では実際にDXに取り組む企業、準備段階に入った企業が急激に増えていることは明らかです。

”D”は進んでも”X”までは至らない現状

 読者の皆さんが勤める会社はいかがでしょうか? 「すでに自社ではDXに取り組んでいる」と答えられる方も多いかもしれません。現に2021年末時点では、大手企業のうち約7割、中堅企業では5割弱、中小企業でも3割弱の企業がDXを志向しているという調査結果が報告されています。

 しかし、その取り組みの内容を見てみると、実際にはDXはあまり進んでいないのが現実です。「DXに取り組んでいる」と回答する企業は、”D(デジタル化)”は確かに進み始めていますが、”X(変革)”までには至っていないことが多いからです。そもそもDXとは「デジタルを活用した企業変革」を意味しますが、国内の多くの企業では、「既存業務のデジタル化」に終始して、その先の企業変革につなげることができていないのです。

 それは下図「大企業の経営層・役職者の認識」(ドリームアーツ社/2021年8月調査)を見てもわかります。この調査は、従業員1000人以上の大企業の経営者・役職者を対象にDXの実態について調査したものです。1つめの「あなたの会社はDXに取り組んでいますか?」という質問に対し、約6割は「全社的もしくは部分的に取り組んでいる」と回答しています。しかし、2つめの「あなたはDXとデジタル化の違いを説明できますか?」という質問に対しては、驚くことに7割以上が「説明できない」と回答しています。中間管理職に至っては8割がDXとデジタル化の違いを説明できないと回答しているのです。

「大企業の経営層・役職者の認識(ドリームアーツ社2021年8月調査をもとに筆者作成)
「大企業の経営層・役職者の認識(ドリームアーツ社2021年8月調査をもとに筆者作成)

 この調査を見たとき、私は驚きと同時に自身の実感に近いものを感じました。私は日々多くの経営者と話をする機会がありますが、彼らのほとんどが、「DX=ITツール導入」と勘違いしているのです。また、DXのサポートをしているコンサルティング会社やシステム会社の人も同様に、DXに対して「デジタル化」の枠を出ない認識を持っているように感じます。

 コロナ禍で「日本はデジタル後進国であることが露呈した」といった指摘もありますが、DXが多くの人に正しく理解されていない現状では致し方ないことだと思います。しかし、このままでは良いはずはありません。早急にDXに対する認識を正し、行動に移していくことは喫緊の課題です。

今からでも遅くはない! 2022年を”DX元年”に

 2021年に入ってから、私たちの会社へ相談に来ていただける企業が増えました。内容の多くは「DXに取り組んでいるがなかなか結果が出ない」というもの。具体的には「ITのプロを採用したがITツールの導入が増えていくだけ」「大手コンサル企業を使ったが欧米の事例を模倣した提案ばかり」など多岐にわたりますが、いずれもDXの定義を正しく理解できずに従来のデジタル化と同列にとらえてしまっていることが大きな要因です。

 私たちはそうした相談者に対し、まずはDXが何かを正しく理解していただき、実現のための具体的な方法をお教えしています。すると、相談に来られた企業の多くは、間違いに気づき、正しい方向に修正できた企業ではDXの真の目的である「企業変革」に進みだしています。 

 2022年はまだ始まったばかりですが、今年は多くの企業がDXを正しく理解し、本格的にDXが進みだす年になると考えます。そういう意味では、2022年は真の“DX元年”となるでしょう。本連載ではDX実現のためのさまざまなヒントをお伝えしていこうと思います。

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筆者が代表を務める㈱デジタルシフトウェーブでは、無料マガジン「DXマガジン」を運営しています。DXの人材育成を通して企業の変革をめざす、というコンセプトのもと、DX実現のために「本当に役立つ情報」を提供。DXをめざす経営者、担当者に役立つノウハウが満載です。また、定期的に実施しているDX実践セミナーでは、各界の実践者の話を聞くことができます。https://dxmagazine.jp/

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