不況下こそ求められるイノベーションとその実現に向けて

2012/01/19 18:31

アクセンチュア株式会社 製造・流通本部小売統括パートナー 原口 貴彰

市場の変化に対応するため情報活用のイノベーションが重要

 

 U・K・プラハードの著書「イノベーション新時代」の中では「個客経験の共創」とそれを実現するための「グローバル資源の利用」が重視される環境になっている。言いかえれば消費者へのパワーシフトが進んでいるということになり、それに対応した業務手法の革新が必要になっている。市場の底流では2つのメガトレンドが起きている。ひとつは個客理解の深化のトレンド、もうひとつは調達先の拡大トレンドである。個客の消費動向を把握するためには情報システム、ネットワークの活用を拡大していかなければならない。例えば高価なワイングラスを購入したことでワインへの興味が広がり良いワインを購入するというようなケースは個人を捉えても一面的なPOSデータから判断するだけでは次の消費行動は浮かび上がってこない。個客の理解ができていないというわけだ。


 小売業には4つのイノベーションが求められている。(1)品揃え・ゾーニングのイノベーション、(2)カスタマーサービスのイノベーション、(3)SCM・発注プロセスのイノベーション、(4)バックオフィス業務のイノベーション―の4つだ。品揃え・ゾーニングでは、商圏ごとのニーズや個店のニーズに合った形で品揃えするために権限を店舗に与えるという動きもあるが、結果的には勘に頼った品揃えに陥っているケースがある。その対策として個店に任せるのをやめて、本部で高度な棚割計画を作って個店に適用するという方法に変えていかなければならない。それに他社の持っていない情報を付加できればより良い棚割になるだろう。ウォルグリーンは実際に個店のロカール顧客に対応するため本部の棚割策定機能を強化するという矛盾する手法で成功した。ただ日本の場合、非常に大きなボトルネックがあるのも事実だ。棚割やスペース情報を自店の情報として持っていない場合がある。


 カスタマーサービスでは顧客情報・分析システムを活用しているが投資に比べ利益につながっている実感がない、というケースがある。その場合、思い切って企業ごとに顧客情報を把握し分析するのをやめるという選択肢もある。英ネクターは共通ポイントサービスを提供し定型分析や要求に沿った分析結果を提供している。参加企業が多いので1社当たりのコストは軽減される。日本でもTカードはこうした活用の事例である。


 SCM・発注プロセスも本部に集約してしまう。補充・発注は科学的な手法を必要とする。つまり1個売れたら1個補充するというような単純な仕組みではなく需要予測変動を織り込んで大量に補充発注する仕組みにブラッシュアップされなければならない。これまでPOSデータの実績情報をベースにしていたものを、予測も加えた発注に移行するわけだ。


 バックオフィス業務では紙ベースの情報や伝票の電子化が遅れている。オフショアへのアウトソーシングをする場合、業務を標準化し電子化しておくことが不可欠である。


多くの日本の小売業では、未だに個店と本部の情報断絶が改善されていない。クラウドコンピューティングが可能性を広げている中で、標準的なテクノロジーを活用して個店と本部を情報連携していくことが求められており、そうした状況を見直していくことがイノベーションにつながっていく。

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