ダイヤモンド・リテール・カンファレンス2014開催レポート
オムニチャネル・コマースのネクストステージ
注目企業の実践アプローチと成長を支えるIT戦略

競争優位を築くためのオムニチャネル差別化戦略

2014/10/14 16:53

ダイヤモンド リテール・カンファレンス2014開催レポート

リアルを起点とした生活者中心の
循環型マーケティング戦略について

市場トレンドに合わせて有効なアーンドメディアからオウンドメディアに誘引

 

ドラッグストア業界ではマツモトキヨシホールディングスの独走状態が続いているものの、2位以下とのシェアの差が縮まってきている。また業界全体の売上高は堅調に伸びているが、経常利益率は鈍化傾向にある。そうした中で市場と生活者の変化に対応して、ドラッグストア自体の変革も求められている。マツモトキヨシでは従来からのメディア戦略だけではなく、スマホをターゲットにしたマーケティング活動を展開し成果を挙げている。

 

3つのメディアをどう再構成していくべきか

 

 ドラッグストア業界を取り巻く市場規模は拡大しているが、ここ10年でみると経常利益率はその規模拡大に対して停滞しているという状況だ。

 

 異業種を含めた競合が激しくなる中で、次善の策を講じる必要性が高まっている。

 

 顧客がかつてのように「ドラッグストアに行けば何でも揃う」と期待していた時代から、現在ではさらに利便性やポイントシステムなどの付加価値もドラッグストアに求めており、顧客のニーズは確実に変化している。

 

 そうした時代にあって、当社でもドラッグストアの店舗コンセプトや運営スタイルはかつてとそう大きく変化していないため、新たな施策を講じなければ競争優位性は確保できないという危機感があった。

 

 競合するドラッグストアも差別化戦略を求めてそれぞれの方向性を打ち出しつつあるというのが現状である。

 

 国内のスマホ普及率は、米国や韓国などに比べてまだ低いが、スマホ保有者の生活行動には変化が起きている。とくに1980年代後半に生まれたデジタルネイティブ世代から、90年代後半の生まれた時からモバイルインフラが整備されていた世代では、1日に取得・消費する情報量が飛躍的に増大しているといわれている。

 

 そうした世代では、企業がマーケティング施策として提供する情報ではなく、ソーシャルメディアなどから得た情報を受け入れる傾向が強い。つまり従来からのメディア戦略をどう再構成していくかが課題になる。

 

 その上で新規見込み客の獲得を狙うメディア戦略に関しては、トレンドに合わせたメディアとしてLINEを活用し、販促活動を実施している。

 

つぶやきの伸びとともに季節外れでも売上げ拡大

 

 見込み客の獲得や生活者の声のリスニングと施策立案にはアーンドメディアを活用している。2012年末頃から、ソーシャルメディア(twitter)上であるメーカーの商品が話題になり始めた。

 

 ツイートされたキーワードは「○○(商品名)はマジ万能…」や「使える」といった言葉。2013年2月の段階ではツイート数は2万件超であったが、2014年2月には「最強…」とか「使える」、「塗りたくる」などポジティブな発言が頻繁に出て来るようになり4万件超のツイートが出現するようになった。

 

 商品にまつわるツイートを流行の前後で比較すると、商品に対するポジティブな発言と新しいワードが頻出するようになっていた。

 

 さらに分析してみると、高級クリームとその商品の成分が似ているということが発端だったようだ。本来、その商品は乾燥する冬場に売れるものだ。

 

 しかし夏を前にした時期にその商品を陳列したところ、ツイート数の上昇とともに販売数が伸び、ツイート数の減少につれて下降した。

 

 この商品の事例は、ソーシャルメディアなどで話題になり、ブログやまとめサイトで記事になる、さらに他のメディアにも取り上げられる、生活者がそうした情報を参考にして購買し体験、そうした生活者がポジティブな情報を発信する、そしてソーシャルメディアなどで再度話題になるという、生活者が主体の流行が自律循環していた。

 

 こうした生活者が主体となって起こる変化を、どのようにオウンドメディアに取り込んで行くかがポイントになる。

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