賃料のあるべき額を高い精度で割り出すシステムを発表=ギブ・スパイラル・ジャパン

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難しい退店も適切に判断可能

 ギブ・スパイラル・ジャパンがこのほどリリースした、高性能な減額シミュレーションシステムの「Geniee1.0」。同社がサービスを提供するにあたって強い武器として活用できるのはもちろんだが、店舗ビジネスを展開する顧客が享受できるメリットは非常に大きい。

 たとえばチェーンストア企業の場合、決断が難しいと言われるのは退店である。新規出店したものの当初の読み通りの収益を確保できない、また競合店の進出で業績が悪化したなどの状況に陥っても、自社戦略のもとで撤退するかどうかを適切に判断できる。

 もしデータの精度が低ければ、正しい判断を下すことは難しくなる。決断を間違えれば、大きな損失を出してしまうことも考えられる。

 退店を判断するのが経営トップ自身ではなく、担当部署が対応しなければならない場合も 「Geniee1.0」は有用だ。シミュレーションした減額が正確であれば、社内で稟議書を上げやすくなるというのは容易に想像できる。

 「Geniee1.0」を使って減額交渉したことで、大幅に賃料が低減できた企業は早くも増えている。現段階では大手企業の一部に限られているが、今後、食品スーパーをはじめ、引き合いは強まると見られる。

 ギブ・スパイラル・ジャパンの鷹尾社長は、「『予想以上に賃料を安くできた』と、喜びの声も多く聞かれる。さらにお客さまの満足度を上げられるよう、さらにサービスを充実させていきたい」と話している。

「窓」から新風を送り込む

 また、ギブ・スパイラル・ジャパンは2022年4月、「賃貸借windows12」という研修サービスを新たにスタートさせた。賃料の交渉技術を伝授するという、賃貸借業務に携わる担当者向けのユニークなプログラムだ。

 開発の背景を、ギブ・スパイラル・ジャパンの鷹尾社長は次のように説明する。「一般に、賃貸借に関する手法は非常に属人的であり、さらに担当者は高齢化する傾向にあると言われる。どの企業も、交渉のノウハウについては、次の世代に伝えたいという気持ちはあっても、効果的な対策を打てていなかった」

 こうした現状に対し、「窓」を作り、新風を送り込みたいとの思いが、「賃貸借windows12」という名称には込められている。店舗ビジネスを展開する企業との豊富な取引を通じ、蓄積した経験を活かした同社ならではの内容である。

 プログラム名の末尾にある「12」は、ギブ・スパイラル・ジャパンの12年で得たノウハウを余すことなく伝えるというコンセプト。商談数分母で2023年1月末時点の成約率はなんと100%、実施は順番待ちとの事。

 研修はリアルで行うほか、リモートにも対応する。とくにリモートは、担当者を一ヶ所に集めるのが難しい、規模の大きい企業でも利用しやすく人気がある。遠隔地間での会議が定着したコロナ禍にあっては、むしろ合理的なスタイルと言えるだろう。

 高度な交渉術のプログラムを提供するギブ・スパイラル・ジャパン。そもそも交渉術を身につけていない一般の担当者と、交渉のプロとでは、賃料の減額にどの程度の違いがあるのだろうか。

 ギブ・スパイラル・ジャパンが持つビッグデータを解析したところ、ある企業の年間削減額は2500万円だったのに対し、プロの交渉成果は1億円と、4倍もの差が生まれるとわかった。また、一般担当者の成功率が50%、減額率5%であるのに対し、プロは同75%、同13.5%と顕著な差が出た。

高い的中率を誇る賃料査定AIシミュレーション「Geniee1.0(ジーニー1.0)」

 魅力的な内容のプログラムだけに、引き合いは強い。これまで取引のあった企業に研修の概要を説明したところ、全社から申し込みがあったそうだ。つまり成約率は100%。「ある程度、需要はあるだろうとは予想し始めたが、これほどの反響があるとは思っていなかった」と鷹尾社長は驚きの表情を浮かべる。

実践的なノウハウを講義

 「賃貸借windows12」とは、どのような内容の研修なのだろうか。

 キャッチコピーとして掲げるのは「ノウハウ化された賃料交渉技術を自社交渉の成果倍増へつなげる『実践講座』」。交渉にすぐ使える、「実践的」な技術、内容を多く盛り込んでいるのが大きな特徴である。

 主要コンテンツのひとつは、「主導権セオリー」。交渉にあたっては、いかにイニシアチブを取るかがポイントとなる。研修では相手の共感や信頼を得ながら、最終的にはこちらの意向通りに話をまとめる手法を教える。「対人折衝セオリー」では、効果的なプレゼンテーションの方法などについて講義する。また「魔法の6テクニック」と題するコーナーにおいては、より具体的なノウハウ、アドバイスを伝授しているというのは興味深い。

 研修は講師が一方的にレクチャーするだけでなく、質疑応答の時間も設けている。普段、仕事上で感じている悩み、困りごとに対しても丁寧に答えてくれるため、経験の少ない担当者でも安心して受講できる。

 プロの交渉術と聞くと、大きく減額する強引なテクニックをイメージする人も多いかもしれない。たしかに、減額の幅はもちろん気になる要素ではあるが、学ぶべきは賃料を安くするスキルだけではない。研修では、貸主との関係を保った上で交渉を進めることを重視している。

 あくまで長期的な取引ができることを視野に、賃料減額の達成を目指しているのが、本物の交渉術と言えそうだ。

店舗ビジネスを展開する企業の申込みが急増している「賃貸借windows12」で熱弁をふるう鷹尾社長
店舗ビジネスを展開する企業の申込みが急増している「賃貸借windows12」。鷹尾社長自らが熱弁をふるう

 「一般的な研修会社が提供する講座には、賃料交渉という専門的な内容を学べるものはほとんどない。より多くの方のお役に立てるよう、今後も内容を充実していきたい」(鷹尾社長)

店舗開発に特化した人材紹介サービス

 賃料減額交渉というユニークなサービスを提供するギブ・スパイラル・ジャパン。一方、今回紹介したように、研修など関連事業の開発にも熱心に取り組んでおり、独自のビジネス展開を特徴としている。

 鷹尾社長は、その狙いを次のように説明する。「当社は目の前の利益を追わず、長期的な視点のもと、チェーンストアはじめ店舗ビジネス業界全体の活性化につながるようなサービスに力を入れている。これにより取引企業さまの成長、発展に寄与できると信じている」。

 この方針のもと、2022年10月から新たに開始したのは、店舗開発に特化した人材紹介サービスである。

 一般に店舗開発スタッフ、とくに即戦力となる人材の確保に苦労している企業は多いと言われる。こうした状況を受け、ギブ・スパイラル・ジャパンでは、店舗開発分野のインフラとして、専門スタッフを紹介する機能が必要だと判断した。

 具体的には、開発に携わる人材を募ってデータベース化、求める企業へと紹介するというサービスである。まだスタートして間もないが、利用者からの反応は上々で、問い合わせも増えている。

 じわりと広がる新サービスだが、ギブ・スパイラル・ジャパンでは、まだ大々的にアピールすることには慎重な姿勢をとる。採用したい会社が存在するということは、他方で今勤務する企業を辞める人がいることを意味するからだ。

 「人材の流動化は、長期的には業界に好影響をもたらす。皆さまの理解を得ながら、すこしずつサービスを浸透させていきたい」と鷹尾社長は意気込みを語る。

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