米雇用統計、7月は16.4万人増に減速 賃金は緩やかに上昇

2019/08/05 14:00
ロイター
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雇用統計イメージ図 (2019年 ロイター/Mike Segar)
8月2日、米労働省が発表した7月の雇用統計は、非農業部門雇用者数の伸びが鈍化する一方、賃金は緩やかに上昇した。米中貿易摩擦の高まりと共に来月の追加利下げの追い風となる可能性がある。写真は2009年3月、ニューヨークで(2019年 ロイター/Mike Segar)

[ワシントン 2日 ロイター] – 米労働省が2日発表した7月の雇用統計は、非農業部門雇用者数の伸びが鈍化する一方、賃金は緩やかに上昇した。米中貿易摩擦の高まりと共に来月の追加利下げの追い風となる可能性がある。

非農業部門の雇用者数は16万4000人増と、ロイターがまとめたエコノミスト予想と一致した。5月と6月を合わせた雇用者数は従来から4万1000人下方改定された。平均週間労働時間は約2年ぶりの低水準となった。

7月の就業者数の増加ペースは、2018年の月間平均である22万3000人と比べて一段と鈍化した。雇用ペースの減速が労働力の需要減少によるものなのか、適切な人材が見つからないためなのかは定かでないとエコノミストはいう。ただ依然として労働年齢人口の伸びを維持するのに必要な約10万人は大幅に上回っている。

失業率は前月から横ばいの3.7%だった。7月は37万人が労働市場に参入。労働参加率(生産年齢人口に占める働く意志を表明している人の割合)は63.0%と、前月の62.9%から上昇した。

現在は職を探していないが働く用意のある人(縁辺労働者)や正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人を含む広義の失業率(U6)は7.0%と0.2%ポイント低下し、2000年12月以来の低水準を付けた。

失業率は50年近くぶりの低水準にあるものの、賃金の伸びは緩やかな状態が続いており、緩慢な物価につながっている。9月に米連邦準備理事会(FRB)が再び利下げする材料となるかもしれない。物価は今年、FRBの目標である2%を下回り続けている。6月は前年同月比1.6%上昇、5月は1.5%上昇だった。

FRBは7月31日、08年以来の政策金利引き下げを決めた。予想通り25ベーシスポイント(bp)の利下げだった。パウエルFRB議長は景気拡大が過去最長期間となる10年間続いていることに言及し、利下げを貿易摩擦や世界経済の減速などの下振れリスクに対する保険と位置づけた。

トランプ米大統領は前日、3000億ドル相当の中国製品に対し10%の追加関税を9月1日から課すと発表した。これを受け市場では、FRBが9月もほぼ確実に利下げするとの見方が広がった。米中貿易摩擦は製造業の打撃となっている。製造業生産は2四半期連続で減った。設備投資も打撃を受けた。第2・四半期は3年超ぶりに落ち込んだ。第2・四半期GDPは年率で2.1%増にとどまった。第1・四半期は3.1%増加していた。

ハイ・フリークエンシー・エコノミクス(ニューヨーク州)の米国首席エコノミスト、ジム・オサリバン氏は「幾分の減速が見られた。前日に発表された対中追加関税発動を受け、通商問題に関連して向こう数カ月で一段と軟調になる可能性がある」と指摘。「FRBは9月の会合で追加利下げを決定する」と予想。MUFG(ニューヨーク)の首席エコノミスト、クリス・ラプキー氏も「今回の雇用統計には来月の追加利下げを阻むものは何もなかった」と述べた。

時間当たり平均賃金は2カ月連続で前月比0.3%(8セント)増加した。7月の前年同月比は3.2%増。6月は3.1%増だった。賃金の伸び率は、10年ぶりの高水準だった18年末と比べて鈍化している。

雇用や賃金のペースは減速しているものの、労働市場は経済の下支え要因だ。米経済は、昨年の1兆5000億ドル規模の減税政策の効果が薄れている。第3・四半期国内総生産(GDP)は約1.5%増との見通しだ。

雇用統計の内訳は、建設業が4000人増。前月は1万8000人増加していた。製造業は1万6000人増。前月は1万2000人増加していた。雇用統計では製造業の就業者数が好調に伸びた一方、同部門の活動は弱まっている。前日発表された7月の製造業景気指数は雇用が16年11月以来の低水準となった。

米経済の約12%を占める製造業は、米中貿易摩擦や世界経済の減速、在庫の積み上がり、米航空機大手ボーイング<BA.N>の旅客機を巡る問題が重しとなっている。過剰在庫は自動車産業で特に顕著だ。製造業の週間労働時間は7月に0.3時間減の40.4時間と、11年11月以来の低水準をつけた。全体の平均週間労働時間は34.3時間と、17年9月以来の低水準だった。前月は34.4時間だった。

FTNフィナンシャル(ニューヨーク)の首席エコノミスト、クリス・ロー氏は「労働時間が短くなったことは、製造活動が低調になったことを示している」と指摘。BNPパリバ(ニューヨーク)の米国エコノミスト、アンドリュー・シュナイダー氏は「労働時間の短縮は、非農業部門雇用者数の動向が示すよりも雇用者が手綱を引き締めている可能性があることを示している」としたほか、S&Pグローバル・レーティングス(ニューヨーク)の首席米国エコノミスト、アン・ボビノ氏は「労働時間の短縮の長期化は企業が採用を抑制する可能性があることを示しており、その後はレイオフのほか、個人消費の減少につながる」との見方を示した。

政府部門は1万6000人増だった。前月は1万4000人増加していた。専門職・企業サービスが3万8000人増加したほか、ヘルスケア、娯楽、金融、卸売りなども増加した。ただ小売は3600人減少。6カ月連続での減少となった。

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