焦点:供給網と物流大渋滞、中国から米国にゲーム機が届くまで

ロイター
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中国から届いたゲーム機を検査するT2Mの従業員ら
12月15日、肌寒いある日の朝、中国から米ボストン郊外にあるゲーム機企業T2Mの倉庫に届いた貨物コンテナはパレット(荷役台)に穴が空いていた。写真は11月、マサチューセッツ州ペムブロークの倉庫で、中国から届いたゲーム機を検査するT2Mの従業員ら(2021年 ロイター/Brian Snyder)

[ペムブローク(米マサチューセッツ州)/東莞(中国) 15日 ロイター] – 肌寒いある日の朝、中国から米ボストン郊外にあるゲーム機企業T2Mの倉庫に届いた貨物コンテナはパレット(荷役台)に穴が空いていた。「フォークリフトの仕業に違いない」──。最高経営責任者(CEO)のフレーザー・タウンリーさんはそうつぶやきながらも、製品が倉庫に届いただけで御の字だと思っている。

この傷は、T2Mのゲーム機が中国・広東省の工場からはるばる1万0710マイルの旅を経てボストン郊外に届くまでについたものだろう。製品はここから、小売り大手ベスト・バイなどに配送されていく。

新型コロナ禍で世界の需要は突然縮小した後、一転して急回復し、世界的なサプライチェーン(供給網)に混乱を引き起こした。特に年末商戦を控えたこの時期、メーカーや小売企業、鉄道、トラック配送業者は商品を店頭に届けるのに四苦八苦している。ロサンゼルス港に滞留するコンテナ船の数は過去最多を記録し、波止場には空のコンテナが積み上がっている。

遠隔地の工場で商品を安く製造する世界的なシステムに頼ってきたT2Mなど多くのメーカーが、この混乱によって打撃を被っている。企業はこうした供給網を構築する上で、手元の在庫を最小限まで切り詰めた。それによって利益は大いに恩恵を受けたが、現在のように供給網が目詰まりを起こすと、悲惨な目に遭う。

T2Mのゲームコントローラーは、ベスト・バイ、ウォルマート、ターゲットなどの大手小売りチェーンやアマゾンで販売されている。製品の中には、アップルの「iPhone(アイフォーン)」に有線接続できるように作られた唯一のフルサイズ機もある。

タウンリーCEOは自社工場を保有せず、多くの消費者向け企業と同様、自身で機器を設計し、製造は中国の工場に任せている。

T2Mの中国拠点でシニア設計エンジニアを務めるブリーズ・フェン氏は、東莞市の工場で製品が製造され、コンテナに収められるまでを見届ける。コンテナはトラックで香港に送られた後、米西海岸行きの貨物船に載せられる。

フェン氏によると、危機が頂点に達したのは6月のこと。ちょうど年末商戦までに米国に配送できるよう詰めの作業を行っていた時だった。コンテナ確保を試みたがかなわず、「なすすべもなかった」という。

東莞市の工場では、青いガウンと白いキャップを着用した従業員らが列をなし、ゲーム機の組み立てとチェックにあたっている。

工場で取材に応じたフェン氏は、10月には状況が緩和したように思えたと語る。しかし、オミクロン変異株が出てきてからは「以前のような状態に戻れるのか、心配は尽きない」。

 

何もかも異常

T2Mはボストンの倉庫に製品を届ける新たなルートを探らざるを得なくなった。同社には通常、月に1、2個のコンテナが届く。1個につき4万台の機器を収納できる。

過去には最短距離でコストの安いパナマ運河経由のルートで輸送していたが、港湾の混雑によってこのルートの利用は難しくなった。今では、コンテナはロサンゼルス港に着いた後、鉄道でニュージャージー州ニューアークの通関に送られ、そこからトラックでボストン郊外の倉庫に届く。その後、製品を仕分けしてケンタッキー州にある小売り大手の配送センターにトラックで届けるという手順だ。

しかしここ数カ月、何もかも通常通りには進まなくなった。9月にはゲーム機を積んだ貨物船がロサンゼルス港で3週間も足止めされる事態。タウンリー氏は締め切りに間に合わせるため、製品が荷下ろしを終えるとニューアークを経由せずケンタッキーに直送しようと試みたが、「あいにく、通関の人々だけは頑として認めてくれなかった」という。

結局、中国からシカゴ経由でテネシー州に航空貨物で直接運ぶという解決策に至った。その結果コストは跳ね上がり、コンテナ1個を中国から倉庫に輸送するコストは約1万8000ドルになった。去年の今ごろは3500ドル、実に5倍以上だ。

ゲーム機が倉庫に着けば一件落着というわけではない。トラック運転手の確保が至難の業になったため、タウンリー氏は自分でトラックを買うことまで考えたが、結局やめた。

小さな企業だけに、顧客にコストを転嫁できる力はない。その代わりコスト削減に励んだ。タウンリー氏はゲーム機を手に取ると、色とりどりのボタンを指さして見せる。この色を諦めて黒に統一することで、1台当たり0.5ドルのコストを節減したという。ゲーム機のサイズもわずかに小さくし、機器の格納に使うプラスチック製の部品も1つ減らした。

中国から届いたパレットにどこで穴が空いたかは、ほぼ特定できた。東莞工場のフェン氏はコンテナ収納前にすべてのパレットの写真を撮っており、出荷前にできた傷ではないことはすぐに確認できる。このコンテナはニュージャージー州の通関審査のためにフォークリフトで引き降ろされたため、その際についた傷に違いないとタウンリー氏は確信している。

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