人気アナリストが解説、主要小売7業態決算総括と24 年度の展望

解説:風早 隆弘(UBS証券シニアアナリスト/コンシューマー・セクター ジャパン・ヘッド)
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未曾有のインフレ、インバウンドの復活、巣ごもりの反動減などが複雑に絡まり、小売業の2023年度決算は業態間格差、企業間格差が顕著に表れた。UBS証券シニアアナリスト/コンシューマー・セクター ジャパン・ヘッドの風早隆弘氏に主要7業態の23年度決算と、24年度の経営のポイントについて解説してもらった。

企業間格差拡大のSM、GMS復活の道筋は?

 食品スーパー(SM)の2023年度業績は、不断の経営努力の結果が如実に表れた。「インフレ下でいかに差別化するか」が重要な経営テーマとなり、明確に差別化されていない企業ほど消費者から選ばれづらく、厳しい結果になった。

 業績が好調だったのは、必ずしも価格訴求型の業態に限られない。たとえば、ヤオコー(埼玉県)は安さだけでなくミールソリューションを軸とした差別化によって、顧客をきちんと獲得できている。24年度もこの状況は変わらない。強い企業はますます強くなり、企業間格差はさらに拡大するだろう。

 総合スーパー(GMS)は、ユニー(愛知県)の一人勝ちともいえる結果となった。圧倒的な高収益体質になったユニーがこれからさらにどう進化していくのかに注目したい。

 ユニーでは、同じくパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(東京都:以下、PPIH)傘下のドン・キホーテ(東京都)との組織統合がすすみ、“ドンキ流”のローコストオペレーションのノウハウが採り入れられつつある。24年度以降はPPIHでのGMS業態とディスカウントストア業態との統合に向けた取り組みのなかで、さらなる収益改善を見込めるだろう。

 セブン&アイ・ホールディングス(東京都)は、イトーヨーカ堂(東京都)を中心とするスーパーストア(SST)事業の株式公開化を検討し始めた。イトーヨーカ堂の自立を促すうえで妥当な経営判断であり、もっと早く決断してもよかったとも思う。

 イトーヨーカ堂の問題は、大規模小売店舗法(大店法)の下で大量につくった店舗と大量に採用した人材をリストラできないなか、収益性が大幅に低下し、前向きな投資ができないために業態の進化がすすまず、消費者にとって古めかしいものになってしまったことだ。老朽化する店舗の周辺でさまざまな競合が出店し、その結果、店舗の劣化につながるという悪循環に陥っていた。

 気がかりなのは、今後、

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