「深めてとがる」 ハードオフ山本太郎社長が語る、チェーン店でファンを増やす方法
昨今のサステナブルな意識の高まりや物価の高騰によって、中古品の購入が身近な選択肢となっている。家庭から買い取った中古品を店頭で販売するBtoCのリユース企業ハードオフコーポレーション(新潟県:以下、ハードオフ)は、1993年にリユース事業へと業態変更して以降、国内に989店舗、海外に19店舗、合計1000店舗を超える成長を遂げている。山本太郎社長に同社の成長戦略、今後の展望について聞いた。
業態を分けて専門性を高める
―まず、事業概要と沿革について教えてください。
山本 ハードオフは、家庭で不要になった物品を買い取り、整備やクリーニングをして販売するBtoCのリユース事業を行っている。当社は新潟県でオーディオやパソコンの専門店として1972年にスタートした。
世の中が大量生産・大量消費の時代から循環型へと移行するなか、93年にリユース事業へ転換して「ハードオフ1号店」を開店した。現在は、「ハードオフ」「オフハウス」など、合計7業態がある。10年前から、カテゴリーをさらに絞った深化型店舗「PC館」「工具館」など6種類を展開している。

1980年11月生まれ。新潟県出身。早稲田大学商学部を卒業後、ファーストリテイリングを経て2007年にハードオフコーポレーションに入社。
常務・副社長などを経て19年4月に社長就任(現任)
―リユース市場の動向について教えてください。
山本 リユース市場は好調だ。世界的にSDGsなどの考え方が普及したことで、物を捨てない風潮が加速している。国内では、CtoC型フリマアプリ「メルカリ」登場の影響が大きかった。リユースという考え方が広く知られたことで、市場が拡大している。
メルカリが出た当初は、リアル店舗によるBtoCのリユース事業が陰りを見せた時期があった。それでも「顔が見える人に売りたい」「自分の目で確かめて買いたい」といったニーズは依然として高い。こうした状況を鑑(かんが)みると、スタッフとコミュニケーションをとりながら買取・販売ができるという点はリアル店舗の強みだと思う。また、値段交渉や発送の手間がないBtoC型のよさも改めて注目されていると感じる。
―2025年3月期第2四半期の売上高は161億円(対前期比14.0%増)、営業利益は15億円(同41.4%増)で、いずれも過去最高を更新しました。業績を伸ばし続けている理由は何ですか。
山本 成功要因の1つとして、業態を分けて専門性を高めたことが挙げられる。当社では専門知識を持ったスタッフが買い取りを行う。お客さまとコミュニケーションをとり、商品に対する思いも一緒に買い取ることを意識している。単に買取価格を提示するより、「私も使っていました」といった共感とともに提示するほうが、お客さまに安心感を与える。この安心感が支持され、魅力的な商品が集まりやすくなっている。
こうした運営のためには人材の確保が重要だが、業態を分けて専門性を高めたからこそ、専門知識が豊富な人材を引き寄せられている。趣味の知識を生かして働ける点は、社員にとって魅力的である。当社の離職率は約5%で、小売業の平均よりも大幅に低い数字だ。
―市場の拡大に伴って同業他社の参入も増えています。その中で、御社のいちばんの特徴は何ですか。
山本 どの店舗も金太郎あめにならず、切ったときにすべて違う柄が出てくる点だ。僕らはチェーン店でも、「ダイヤモンドチェーン」をめざそうと常に言っている。ダイヤモンドは一個一個大きさも形も違っていい。だけど全部輝いていなければいけない。この部分に共感してくれた仲間たちがいいものをつくってくれている。