「アマゾン・ブックス」の凄みがわからなければ、デジマの本質は理解できないといえる理由

伴 大二郎 (株式会社ヤプリ エグゼクティブ・スペシャリスト/株式会社顧客時間 プロジェクトマネージャー/db-lab代表)
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「顧客経験価値」を資産として活用することの大切さ

アマゾン・ブックス
アマゾン・ブックスは顧客体験をデータ化しそれを「顧客経験価値」として活用していくことの有用性を6年前の時点で示していた

 アマゾンはECによって「本の買い方」を変え、そこで得た「顧客体験データ資産」を強みとしてリアル店舗を展開することで、他社には真似できない「新しい本の買い方」を提供している。さらにはそこで、子供やデジタルリテラシーが低い人々との接点を構築、アマゾン商圏への取り込みを図っているのである。

 このように、「顧客体験」をデータ化し「顧客経験価値」として活用していくことの有用性はすでに2015年の段階でアマゾン・ブックスが示してくれている。「アマゾンがリアルを侵略し始めた」といった表層的な捉え方では、アマゾン・ブックスひいてはアマゾンの真のねらいを理解することはできない。

 一方で、「巨大なEC企業であるアマゾンだからできることだ」と考える人もいるかもしれない。しかし、もはやデジタルが祖業かリアルが祖業かというのは、リテールDXを考えるうえではなんら関係のないことである。アマゾンはこれからもリアル領域への投資を進めていくと予想されるが、それはすべて「地球で最もお客様を大切にする企業になる」ためであり、優れた「顧客体験」を提供し、そこから「顧客経験価値」を資産活用して成長していくだろう。

 残念ながら日本では「顧客経験価値」が曖昧に定義されており、「デジタル技術によって新しい顧客体験つくる」ことで終わってしまっているケースも少なくないのではないだろうか。しかも、その「顧客体験」をデータとして収集できていないことも多いのが残念でならない。 

 「アマゾンゴー」や「アマゾンフレッシュ」など、アマゾンが送り出すリアル店舗は何かと目を引くものである。しかし、その深層を理解するためには、ベゾスが紙ナプキンに描いた「善の循環」の意味をもう一度見つめ直す必要がある。

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記事執筆者

伴 大二郎 / 株式会社ヤプリ エグゼクティブ・スペシャリスト/株式会社顧客時間 プロジェクトマネージャー/db-lab代表
小売業界においてCRMの重要性に着目。一貫してデータ活用の戦略立案やサービス開発に従事した後、2011年にオプト入社。マーケティングコンサルタントを経て、 15年よりマーケティング事業部部長として事業拡大に向けた組織作りに着手。マーケティングマネジメント部やOMO関連部門等々を立ち上げ統括しながら組織を拡大。海外のイベントや企業訪問など、小売、リテールの情報を収集し社内外への発信活動を行う。21年にdb-labを設立し株式会社顧客時間にプロジェクトマネージャーとして参画。同年6月より、株式会社ヤプリのエグゼクティブスペシャリストに就任。

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