アパレル業界 待ったなしのSDGs対応とリスクまみれの産業政策
カーボンニュートラルは人類存続のために必須
ファッションであってはならない
冒頭で紹介したように、環境破壊は我々人類存続に影響を与えるほど深刻な課題となっている。サステイナブルファッションだ、と一過性のファッションでよいのか、私は甚だ疑問だ。カーボンニュートラルの問題は、国家として取り組むべき国家戦略だ。
誤解して頂きたくないのは、私は決してこのコンソーシアムの批判をしているわけでない。過去、この手の取り組みの中に入り込み、数々の実態を見てきた経験から不安になっているのだ。
例えば、先述したように、税金は日本のために使うから2%の生産工場に固執するお役所の杓子定規なやり方。あるいは、流行のDXを導入すれば受けが良いというだけの理由で、AIが未来予測すれば国内に投入される消費の倍以上の在庫問題が(なぜか)解決されることを間に受け、コンサルやデジタルベンダーなど、補助金狙いの企業が巣食っている実態だ。
このコンソーシアムは、私が長年提唱してきた「デジタルSPA」を国主導で動かす最後のチャンスだろう。今、蚊帳の外に置かれた私たち消費者にできることは、金の流れと議論の流れを観察し、バリューチェーン全体を俯瞰した産業のあり方から、いずれ出される産業政策が、本当に海外生産も視野に入れたカーボンニュートラルを実現し、世界の人権問題を解決するものなのかしっかり見守ることだ。
私が提言しているSDGsの課題解決は以下の4点だ
これで、論理的に過剰在庫の極小化とSDGsの問題は解決する。
- 国が新型コロナウイルスの脅威から企業を守ることにお金は使うが、それ以外は金融機能を正常化させ、産業の新陳代謝を促進する
- 海外の工場に対しては、国が主導になって人権デューデリ、環境デューデリを行って合格した工場に認証マークをつけ、輸入時に優遇税制▲5%を適応する
- 日本のアパレル企業には、残品率の提出を義務化し企業毎の償却ルールを超えた流動資産に「炭素税」を課す
- 日本政府主導でビジネスプロセスプロトコル(標準業務フローや統一コード)を作り上げ企業に遵守義務を課す
最後に、このコンソーシアムには日本で1兆の円の衣料品を販売するファーストリテイリングが(8月21日現在)入っていないことを付け加えておきたい。
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https://ameblo.jp/takukawai/entry-12693219873.html
プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)
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