アパレルも製造メーカーも小売も成功できる! 図解!化粧品事業参入のための差別化戦略
類型パターン3の「自然素材、無添加系」は、製造設備など技術的背景を持たないが、調達原料の素性と、統一されたブランドコンセプトでブランド・ポジションをとり、原料の素性の良さを徹底訴求しながら大手化粧品メーカーとの差別性を打ち出している。また、自然素材の良さを伝えるため、彼らは通販を主戦場とし、ブランド力が固まった段階でリアル店舗に出て行った。このサクセスパターンは小売のプライベートブランドなどで活用可能だろう。
最後に、類型パターン4である。これは、伝統的大手化粧品メーカーのブランド・ポジションであり、化粧品の「効果」・「効能」の訴求よりも、モデルや芸能人を使った「到達地点のイメージ」を強く押し出しており、イメージを大事にしているビジネスモデルだ。このビジネスモデルは、イメージが大事なので、必然的に販売チャネルは百貨店などの売場になってくる。ただし、異業種からの新規参入が増えてきていることからビジネスモデルの限界もあり、彼らは、同じビジネスモデルで戦える異国の地(海外展開)を視野にいれた拡大戦略を志向している。
化粧品業界の異業種競争戦略から見る日本企業への提言
「技術力は世界一だが、マーケティング力はダメ」
これは、過去から日本企業に対して言われ続けてきた言葉だ。確かに、化粧品以外の分野でも外資企業のマーケティング力によって、次々と日本製品が市場で苦戦を強いられている。
一方、本稿で分析したように、人間というのは「口に入れるもの」や「身体につけるもの」については、単なるマーケティングの技術よりも、商品が本質的に持つ機能性や安全性(化粧品で言えば「効果」・「効能」)を指向し、選択購買する。これは、成熟した市場ではより顕著であり、消費者の消費リテラシーが高まり知的購買化が進むからだ。
こうした考察により私が結論づけたいのは、化粧品業界は、正しいマーケティング活動と、ブランド化を行えば、技術的背景を持つ日本企業が世界市場で競争力を持ちうる業界であるということである。日本企業のさらなる競争優位の確立のための提言として本稿を書いた次第である。
プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)
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