アパレルも製造メーカーも小売も成功できる! 図解!化粧品事業参入のための差別化戦略

河合 拓
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どのブランド・ポジションを取るかは戦略上の大きな課題

 図2は化粧品事業におけるブランドとプロダクトの関係を一覧化したものだ。

図表2 化粧品とプロダクトの関係性
図表2 化粧品とプロダクトの関係性

 ブランドといっても、化粧品事業のブランド化にはいくつかのパターンがある。SK-Ⅱのように、ブランドとプロダクト(商品)の関係が1体1の場合。非常に強いブランドイメージがプロダクトと共存し、顧客のロイヤルティは高くなる。しかし、これはキラーアイテム(そのブランドを代表するような強い商品力を持ったもの)がある場合にのみ有効だ。これに対し、ブランド名は一つだが、そのブランドの中に異なる複数のプロダクト(商品)構成を行っているポジションが、ファンケル、DHCなどである。彼らは、ブランド名そのものに、「自然素材 / 無添加」など「共通の訴求イメージ」を持たせ、複数のプロダクト(商品)を展開。どのプロダクトを選んでも共通したコンセプトは変わらないというブランド化を行うことで、強いブランド力の維持、および、異なる商品による売上拡大を両立させている。

  旧来の大手化粧品メーカーは、まるでアパレル企業のようにブランドをスクラップアンドビルドさせ、ライフル型でなくショットガン型(何発か撃って当たれば成功)のブランド戦略をとっている。スクラップアンドビルド型と呼ばれるこのブランド・ポートフォリオは、イメージ訴求を中心とした広告宣伝が鍵となるファッション企業と同一だ。これに対し、異業種参入メーカーは、自社の持っているコアとなる技術は変えず、複数のブランドを様々な顧客のベネフィット(利便性、ニーズ)にあわせて展開し、マルチプロダクト化をめざしている。

  化粧品業界のブランド・ポートフォリオは、基本的にこの4パターンであるが、シングルブランド・シングルプロダクトやシングルブランド・マルチプロダクト、あるいは、シングルテクノロジー・マルチブランドにおいても、コアとなるブランドイメージ、テクノロジーに「一貫性」があり、その「一貫性」が強いブランドをつくっているということに着目したい。そして、その「強いブランド力」こそが、異業種が化粧品業界に新規参入する強力なエンジンになっている。逆に言えば、このブランド戦略がちぐはぐになっている、例えば、色々なブランドを乱立し、消費者に訴求するイメージがぼやけていたり、背景にある技術力がエビデンスベースに基づいておらず、怪しそうに見えたりしていると新規参入は難しい。私の観察・分析では、こうした失敗事例は枚挙にいとまが無い。

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