カゴメ 代表取締役社長 寺田 直行
多様な選択肢を提供し、野菜不足をゼロにする!

聞き手=下田健司
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総菜メニューの提案を強化、サラダ以外で野菜を摂る

──マーケティングにはどのように取り組みますか。

カゴメの生鮮トマト
カゴメの生鮮トマトは年間供給量が約1万8000トン。国内の年間供給量約60万トンのうち約3%のシェアを占めるトップブランドだ

寺田 現在、日本人の1日の野菜摂取量は292グラムです。350グラムの目標値に対して約60グラム不足しています。そこにチャンスがあると考えています。野菜不足をゼロにしていくというのが、私どものマーケティングの基本にある考え方です。

 生野菜、ジュース、調味料に加えて今後、強化していくのが総菜です。総菜というと、肉や揚げ物が中心で、魚の総菜はあまりありません。そこで主力商品の「基本のトマトソース」を使って魚介と野菜を蒸し煮した「トマトパッツァ」というメニュー提案を昨年から始めました。魚の消費量が落ちてきていますし、野菜も一緒に摂取できますから、総菜メニューとしてSMで注目度が高まっています。

 野菜のさまざまな食べ方や情報を発信していきたいと考え、それを具現化したメニューがトマトパッツァです。トマトパッツァに続くメニューが、トマトソースをベースにナス、ズッキーニなどの野菜を煮込んだ「ラタトゥイユ」です。これらの野菜を使用した「地中海野菜グリルのミックス」という業務用の冷凍素材はすでにCVSで使われ始めています。健康志向を採り入れたメニュー化は、SM、外食、ホテルで広がっています。

 野菜の消費量を増やすには、ふだんの生活の中で、野菜をどう上手においしく摂ってもらうかがポイントになります。「野菜の会社」ということで、お客さまの好みに応じて、多様な選択肢を提供していきたいと思っています。トマトの会社だったら、そうした発想は生まれないでしょう。

 当社の生鮮トマトの年間供給量は約1万8000トンで、国内の年間供給量は約60万トンですので、約3%のシェアを持つトップブランドということになります。野菜飲料も、トマトケチャップなどの加工品もトップシェアです。こうした多岐にわたるトップブランドを組み合わせて提案できるのも強みです。

──小売業に最も伝えたいことは何ですか。

寺田 小売業さまと共同して、野菜不足の解消につながる取り組みを進めることにより、お客さまの健康寿命の延伸に寄与していければと思っています。

 当社が供給している緑黄色野菜の量は、独自の計算方式で換算すると、年間約50万トンになります。一方、国内全体の緑黄色野菜の供給量が415万トンですから、当社は約12%を供給していることになります。

 カゴメ商品の原料は野菜がメーンですから、カゴメ商品を販売していただくことは野菜の消費量を増やすことにつながります。小売業さま向けに、カゴメ商品を野菜として重量換算できるプログラムをつくりましたので、小売業さまにも、野菜の消費量を増やすにはカゴメ商品が欠かせないということがわかりやすくなると思っています。

 野菜摂取と健康には関係があることがはっきりしてきています。「トマトの会社から、野菜の会社に。」というビジョンを打ち出したことで、当社からお客さまへの提案の幅も広がっています。私どもの事業活動そのものが野菜の消費量を増やすことにつながっていますので、その考え方を小売業さまとも共有していきたいと考えています。

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