「個」の力を結集し感情に訴える商品をつくる ロッテ牛膓栄一社長インタビュー

聞き手:阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
構成:オフィスライト:小林麻理
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2018年4月1日、ロッテホールディングス(東京都/佃孝之社長)傘下にあった菓子・アイス製造のロッテ、菓子販売のロッテ商事、アイス販売のロッテアイスの3社が合併し、新会社としてロッテ(東京都/牛膓栄一社長)が誕生した。カリスマオーナーによる経営から新体制へ移行、新生ロッテとして売上規模5000億円を目指す。

3社統合によって「あるべき姿」になった

ロッテ社長
牛膓 栄一(ごちょう・えいいち)
●1960年生まれ57歳。83年明治大学卒業、同年(株)ロッテ入社。2008年ロッテ商事(株)営業統括部執行役員、15年同社常務取締役、同年(株)ロッテホールディングス取締役(兼任)、16年ロッテ商事(株)代表取締役専務(兼任)、18年4月、(株)ロッテ代表取締役社長就任(現任)

──今回の3社統合のねらいと意味はどこにあるのでしょうか。また統合によって変化したことはありますか。

牛膓 意思決定のスピードを速め、ガバナンスを強化することが最大のねらいです。また、カテゴリーの統合によって得られる規模を生かし、投資効率を向上させます。菓子とアイスの企画から製造、販売までを一気通貫で行うのが、「あるべき姿」でしょう。このあるべき姿になれたことで、取引先さまにとってもわかりやすくなったと思いますし、社内でもよい変化が生まれています。所属会社の違いから生じる意識の壁が1つ取り払われたことで、社員同士が交流する土壌が出来上がりました。

 大量生産大量販売の時代は、製造面では効率を、販売面は量を追求すればよく、バラバラの会社でも対応できたかもしれません。しかし、現在は変化の激しい消費ニーズに合わせるため、商品と売場をセットで考える必要性がますます高まっています。そのためにも企画、製造、販売の連携は不可欠です。今後は、部門間の壁をさらに取り払い、新しいイノベーションを起こせる環境づくりをしていきたいと思います。

──新会社としての成長戦略を教えてください。

牛膓 3つの成長戦略を持っています。1つめは菓子とアイスを中核として事業競争力を強化すること。業界の中では圧倒的な地位を築きたい。そのためにも工場への設備投資を行うとともに、生産や物流の効率化を図ります。

 2つめは海外事業の拡大です。現在は約10%程度の海外売上比率を、将来的には20%程度にまで高めることを目標にしています。戦略の中心は東南アジアで、現在タイ、インドネシアとベトナムに1カ所ずつの計3カ所の工場が稼働中です。

 3つめは、会社としての社会的価値の向上です。いわゆるESG(環境、社会、ガバナンス)を含むさまざまな観点から、世の中から認められ、尊敬される会社になることをめざします。

 この3つの成長戦略をもって、将来的にロッテとして5000億円の売上を達成したい。直近では、チョコレートとアイスのそれぞれについて、国内売上目標1000億円を掲げています。そのために「キシリトール」「ガーナ」「チョコパイ」の3つを300億円、「爽」「クーリッシュ」「雪見だいふく」「パイの実」「トッポ」「コアラのマーチ」「乳酸菌ショコラ」の7つを100億円のブランドに育成します。

 つまり、我々が持っている強いブランドをさらに強くしていくということです。それが、経営の安定化とお客さまの我々に対する信頼の向上につながるからです。

 そのうえで、世の中のニーズに応えるような新しい商品を開発していきます。たとえば、中高年向けに開発した「歯につきにくいガム粒〈記憶力を維持するタイプ〉」は、当初計画の約1.5倍、約10億円を売り上げました。このガムに配合されているイチョウ葉抽出物成分の強い苦みを抑えながら、味を整えるには高い技術力が必要です。我々がガム会社として培ってきた技術があるからこそ、このアイデアを商品化できたと自負しています。

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