脱トレードで問題解決業をめざせ!アパレル商社の生き残り戦略が「デジタル」ではない理由
経営コンサルタントになって、最初に喧嘩した理由は「在庫」
33歳で商社繊維部、繊維商社を辞め、経営コンサルタントになった。そこで、私は小売チームに配属され、パートナーと言い合いになった。体育会で育った私は基本的に上司に対して従順だったが「在庫」についてだけは曲げられなかった。ディベートの論点は「在庫」である。
当時、世界を代表するグローバルファームに入社した私がどうしても納得しなかったのは「在庫」についての見解である。当時のパートナー(コンサルティング会社の最高職位)は、「在庫とは売るために必要なもの。持つべきものだ」といい、
私は、「在庫は絶対にもってはならない。製造業を除く全ての企業は在庫レスを目指すべき」というものだった。今でこそ、多くの人は私の主張を支持するだろうが、それでも、この数年のことだ。このディベートは20年前のものだったが、今から5年前でも未だに「適正在庫であれば持てば良い。在庫がなくてどうやって売上をつくるのだ」という意見が支配的だったし、今でも多くの人はそう思っている。それでは、その「適正在庫」とはどうやって見分けるのか、というのが私の主張である。それがわからないから、在庫は売上(利益)にもなれば損失にもなる。
相場取引にはまり破綻へ 多くの企業がいまも学べない理由
相場とは、比喩的に得にも損にも、どちらに振れるか分からないものという意味がある。しかし、確実に勝てると確信できる状況もある。例えば、輸入をメーンに仕事をしている商社繊維部、繊維商社であれば、これだけ貨幣を乱発している状況下で為替が(仮に)90円台になれば、「会社の輸入取引全体で一気に買ってしまえ」という気分になるし、これが小売であれば、売れて売れて仕方ない商品であれば、「では一気に今までの数倍を生産し投入してしまえ」という気分にもなる。
この「気分が」くせもので、この誘惑に打ち勝つことが困難なのだ。こうした取引は、時に私たちに多額の利益を残す。これまでいくつもの商社繊維部、繊維商社が羊毛や綿花などの相場からはじまって味をしめ、土地などの不動産に手を出し破綻の道を歩んだのである。
おもしろいことに、相場取引は「歴史から学ぶ」ということはない。いくら時代が変わっても、相場取引による巨大損失はなくならない。残念ながら、人間とは悲しいほど愚かなのだ。
早くも3刷!河合拓氏の新刊
「生き残るアパレル 死ぬアパレル」好評発売中!
アパレル、小売、企業再建に携わる人の新しい教科書!購入は下記リンクから。
河合拓のアパレル改造論2021 の新着記事
-
2022/01/04
Z世代の衝撃#4 Z世代を追えば敗北必至!取るべきトーキョー・ショールーム・シティ戦略とは -
2021/12/28
Z世代の衝撃#3 既存アパレルが古着を売っても失敗する明確な理由とは -
2021/12/22
インフルエンサー・プラットフォーマー「Tokyo girls market」驚異の戦略とは -
2021/12/21
プラットフォーマー起因の歪な過剰生産が生み出す巨大ビジネス、SheinとShoichi -
2021/12/14
Z世代の衝撃#1 ライブコマースで「インフルエンサー・マーケティング」が失敗する衝撃的理由 -
2021/12/07
TOKYO BASEがZ世代から支持される理由と東京がショールーム都市になる衝撃
この連載の一覧はこちら [56記事]
ファーストリテイリング(ユニクロ)の記事ランキング
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2023-08-28ユニクロと東レとのサステナブルな関係から生まれたリサイクルダウン
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは
- 2021-03-05ビジネスは「一勝九敗」 ファーストリテイリングを世界的大企業に導いた“柳井哲学”
- 2024-11-16ファストリが3兆円突破!24年8月期決算で語られた今後の成長戦略
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2021-05-18全産業中ワースト2位の不都合な真実、アパレル業界の環境破壊と人権問題を解決する方法
- 2022-01-11ZARAとユニクロだけがなぜ余剰在庫を撲滅できるのか?本人達も気づいていないメカニズムとは
- 2022-05-03ユニクロ独走の秘密は販管費にあるのに、原価削減を繰り返すアパレルの実態とは
- 2019-04-12柳井正が語るユニクロ「働き方改革」の真価
関連記事ランキング
- 2024-12-10ワールドが三菱商事ファッション買収!進むアパレル垂直統合、2つの課題とは
- 2024-11-26イタリア繊維産業に学ぶ、高くても売れるビジネスの秘密とは 染めと売り方が段違い
- 2024-12-03ユニクロ柳井会長がウイグル綿花不使用発言に至った理由と影響、その複雑な背景とは
- 2021-11-23ついに最終章!ユニクロのプレミアムブランド「+J」とは結局何だったのか?
- 2024-09-17ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
- 2023-08-08EC時代にスクロールとベルーナだけ好調 生き残るカタログ通販、死ぬカタログ通販
- 2023-11-01日本の卸売業150社ランキング2023を一挙公開!各社業績は軒並み好調
- 2024-11-19ユニクロ、開始から7年で明らかになった有明プロジェクトのいまとすごい成果
- 2024-12-17あなたはいくつ備える?AI時代に生き残るビジネスパーソン3つの条件とは
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
関連キーワードの記事を探す
あなたはいくつ備える?AI時代に生き残るビジネスパーソン3つの条件とは
VTuberビジネスに学ぶ、小売業を高収益化する「レバレッジ」の掛け方
ワールドが三菱商事ファッション買収!進むアパレル垂直統合、2つの課題とは
ファストリが3兆円突破!24年8月期決算で語られた今後の成長戦略
「亜熱帯化」でも売上を伸ばすユニクロ、伸び悩むアパレルとの違いとは
ユニクロが中間価格帯になったことに気づかない茹でガエル産業アパレルの悲劇_過去反響シリーズ