脱トレードで問題解決業をめざせ!岐路に立つアパレル商社の生き残り戦略が「デジタル」ではない理由

河合 拓
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商社繊維部、繊維商社の客は、アパレルや小売でなく最終消費者

JaysonPhotography / istock
JaysonPhotography / istock

 いくつかの商社繊維部、繊維商社は大きな勘違いをしている。彼らの多くは、伝統的トレードを主軸に「ビッグクライアントはどこだ」と探し回り、ユニクロや無印良品に行き着く。しかし、そこで待ち受けるのは「レッドオーシャン」だ。各社が同じところに向かって突き進むから、結局コスト競争に陥って体力をすり減らしている。レッドオーシャンという言葉を知らないものは商社繊維部、繊維商社の中にはいないだろうが、分かっていても体はそうは動かない。それでは、誰もが未開拓の「ブルーオーシャン」はあるのかと聞くだろうが、「そんなうまい話などあるはずがない」と私は答える。

 それよりも、彼らに言いたいことは、「なぜ、B2Bといえば、販売力の無い前工程(アパレル業界でいう川下:小売))の連中に好き勝手振り回されるイメージしか持てないのか」である。なければ、つくればいいではないか。その力を持て、と私は言いたいのである。

 私が33歳で経営コンサルタントになったとき、私は「商社マンの仕事とコンサルタントの仕事はそっくりだ」と感じた。理由は、(私のいた商社は)相場取引を禁止されていたため、高い付加価値(例えば問題解決や世界最適調達のノウハウなど)を持ち、例え在庫をもっていなくても商社を通してもらう工夫をしていたからだ。どちらも本質は付加価値で勝負するビジネスなのである。

 実際、私のいた商社の標語は「付加価値創出商社」だった。

 この標語は完全に正しい。だが、いまの商社マンたちはその標語をわすれているのではないだろうか。大きな流通を探し、あの手、この手でその流通に入り込もうとしているだけだ。

  考えてみて欲しい。今、アパレル業界は未曾有の危機に瀕しており、産業は大丈夫かといわれているが、ユニクロは時価総額世界一となり、しまむら、ワークマン、西松屋チェーンなどのディスカウンターは極めて元気である。結局、商社が主要取引先としている会社が競争に勝ち、伸びてゆくことが流通を太くすることであり、中間流通である商社繊維部、繊維商社が復活するトリガーとなるのである。つまり、商社は、アパレル、小売と一緒にバリューチェーン全体を最適化し、徹底してともに、一般消費者を分析し、アパレル・小売が競争に勝つための支援をすべきなのである。

小売が売れなければ、流通に介在する企業は全滅する

 今、前(小売)が売れなければ、ブランドホルダーたるアパレル、中間流通たる商社繊維部、繊維商社、そして、アジアの工場は全滅する。でかい取引を期待し懸命にビッグアパレル・リテーラーに近づいても、そこに待ち受けているのは血みどろの海(レッドオーシャン)である。ターンアラウンドマネージャとして、いくつかの企業再建を手がけてきた私からしてみれば、商社繊維部、繊維商社こそ「筋のよいアパレル・リテーラー」を探し、経営改善を手がけるべきなのだ。

 私が10年前に上梓した「ブランドで競争する技術」で、「商社繊維部、繊維商社は伝統的トレードを辞め、投資とコンサルティングのハイブリッド型を目指せ」と書いたのは、そういう意味なのだ。コンサルタントの多くはアパレルビジネスの素人だし、出せるものは紙の束だ。商社であれば、優秀な人材を揃え、三菱商事のように有能な人材をだし、共同投資で工場もつくることさえ可能だ。商社こそが業界再編を先導するという私見は今でも変わらないのだが、彼らは迷走しているように見える。

 

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