物流、モバイル強化の布石に見えるも…資本業務提携した楽天と日本郵政に多難が待ち受ける理由
郵政、テンセント、ウォルマート 三者三様の思惑を束ねる三木谷氏のリーダーシップ

この手の提携事業には、必ず内部で「我田引水型の綱引き」が行われる。それぞれが、これだけ巨額の投資を何の見返りもなくするはずがない。業務設計が詳細化すればするほど総論賛成、各論反対が巻き起こり、そんなはずではなかった、ということになる。かほどM&A(合併・買収)や提携事業は難しいのである。ましてや、中国のテンセントやウオルマートまで絡んでいる。このジグソーパズルを綺麗に解くことができるのだろうか。まさに、三木谷氏のリーダーシップが試される時だろう。
実際、私自身がこうした事業提携の場に幾度もかり出され、ステークホルダー同士のまとめ役として議論の仲介役を勤め事業提携をしてきた経験は数度ではない。今でも私の仕事の多くはこうした仕事がメーンである。優秀な第三者を使い、利害調整を綿密に行うことが成功のポイントだろう。
さて、ネガティブなことを多く語ってしまったが、私は、三木谷氏を心から尊敬している。孫氏率いるソフトバンクグループは別として、これだけ大がかりな事業に、桁外れの資金調達を成功させ、みずからリスクをとり、物言う株主まみれになりながらも5G時代の競争に参入できるのは、三木谷氏をおいて日本人にはいないだろう。
私は、IFIビジネススクールで教鞭をとっているが、昨今の企業の業績悪化における経費節減のセコさは信じられないほどだ。数千億円規模の企業が人の育成のための経費、たったの数十万円を絞っている。それに対し、器の大きな経営者は、巨額の資金調達を行い、人づくりとものづくりをし、大きな投資であるコンサルも徹底活用し、本気でトランスフォームを進めている。
これからの経営者は、チマチマしたセコさで利益を積み上げ、業績が悪化したら、また、チマチマとリストラし従業員のモチベーションを低下させる人でなく、使うべきところに思い切りお金を使い、綿密に計算された戦略をもって大胆に、かつ繊細にビジョンを実現する人になるだろう。三木谷氏を心から応援したい。
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プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)
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