「株主変遷」から読み解く、西友が超高収益スーパーになる可能性とは?アナリストが解説!
長らく米ウォルマート(Walmart)傘下で事業を展開してきた西友(東京都/大久保恒夫社長)。現在は株式の大半が米投資会社のコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)と楽天グループ(東京都/三木谷浩史会長兼社長)に移り、再スタートを切っている。株主の変遷は西友にどのような影響を与えたのか。クレディ・スイス証券の流通アナリスト、風早隆弘氏が解説する。
“集中治療室”で経営が上向く
西友は2002年にウォルマートとの包括提携を発表し、08年には同社の完全子会社となった。ウォルマートはそれ以降、日本市場への適応に力を注いできた。当初、ウォルマート流の仕組みや経営手法を急速に取り入れる過程では苦労があったようだ。とりわけ、EDLP(エブリデー・ロー・プライス)は、当時日本では一般的ではなく、その導入にあたって現場の従業員を中心に混乱が起こった。
それだけではない。当時の西友は事業多角化で経営が悪化し、本業への投資が行き届いていなかった。また、00年に大店立地法が施行されたのを受け、流通業界では競争が激化。さらに、総合スーパー(GMS)という業態そのものが構造不況で曲がり角を迎えていたことも大きい。
それでもウォルマートは西友に半ば強制的にEDLPを導入し、一時期は販売力を落としたこともある。かつて西友は、GMS業界でも単なる安売りとは一線を画す存在としても位置づけられていた。それがディスカウンターのような立ち位置となり、消費者が持つイメージとのズレが生じたのだ。

新天地となる日本でのビジネス成功をめざすウォルマートは、良好な財務体質を生かして西友に積極的な投資を続けた。新たな基幹システムを投入したほか、物流も整備。老朽化していた店舗を順次改装しつつ、EDLPのさらなる浸透も図った。こうした取り組みにより西友の状況は徐々に好転していく。
最終的にウォルマートが西友を手放したことからすれば、買収は成功だったとはいえないだろう。しかし、ウォルマートが経営危機にあった西友を“延命”し、KKRと楽天に売却できる状態にまで回復させたことは評価に値するだろう。ウォルマート時代の西友は、ある意味で“集中治療室”にいたというのが私の見立てである。
また、現在の西友の大きな武器であるEDLPを手にできたことも大きい。お客に安さを訴求できるだけでなく、労働生産性の向上や店舗の効率運営にも威力を発揮している。一方、かつて日本で主流だった特売による「ハイ&ロー」の価格戦略は転換期を迎えている。過去10年で新聞の購読率が半減し、折り込みチラシの効果が減退。人手不足も深刻で、販促手法も見直す時期だ。こう考えると、日本で早期にEDLPのノウハウを確立できたことは西友にとって大きなメリットだった。
楽天の資本参加は流通業界の発展にも影響

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