物流、モバイル強化の万全な布石に見えるも…資本業務提携した楽天と日本郵政に多難が待ち受ける理由

河合 拓
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全国24000の郵便局 ネックは顧客が高齢であること

日本郵政グループが抱える2万4000の郵便局を、楽天はどのように活用するのか?
日本郵政グループが抱える2万4000の郵便局を、楽天はどのように活用するのか?

 「郵便局24000店舗」といえば聞こえが良いが、お客の平均年齢は、私が同社の支援をしていた10年前ですでに70歳を超えていた。その後、郵便局の客層が若返ったなどという話はきいたことがない。また、現場では、局員に対するインセンティブが曖昧で郵便局員は物販などに力を入れない。24000店舗と聞いて、「これはチャンスだ」と感じる人は、学者か現場を知らないコンサルだ。リアルビジネスでは、「そんなに人がいて、どうやって動かすのか」と心配するだろう。日本郵便といえば、局員による「自爆営業」(ノルマを達成するため自分で商品を買うこと、元々この言葉は日本郵便の社内隠語だ)が、いまなおメディアでは定期的に取り上げられており、この点も懸念される。

  すでに楽天と日本郵政は昨年12月、物流事業での包括提携を発表している。これは、全国に張り巡らせた楽天の物流網でもカバーしきれない山間部や農村部にも商品を届ける、いわゆるラストワンマイルをねらったものである。郵政事業は、良い意味で競争に晒されていないから、収益性が悪化するような場所にも郵便局があった。したがって、買い物不便地帯にお住まいの消費者に商品を届けることが提携の目的だったのだろう。

 しかし、このセグメントで圧倒的に強いのは生活協同組合の共同購入(グループ配達)である。都心部中心に個別配送が増えているが、共同購入というのは、カタログから選んだ野菜から下着までの生活に必要なものを、買い物不便地帯であっても自宅近くまで、毎週決まった曜日・時間に届けてくれるサービスだ。

 今回の資金調達の背景には、楽天の物流網を日本全国津々浦々に行き渡らせたという実績が大きく関与したのだろう。そこから、「もっといろいろできるのではないか」という具合に話が膨らんでいったのではないかと思われる。

  しかし、各種メディアが報道している通りに、郵便局がドコモやSoftBankの店舗のようになると思ったら大間違いだ。競合の実店舗でさえ機種交換のためにお客が待つ時間は長期化しており、渋谷のSoftBankショップでは、1階に2時間の映画が見れるスペースがあるほどだ。1時間待ちが当たり前の機種交換(日本で携帯をもっていない人はほぼいない)を、素人の局員にできるだろうか。それほど、この業務は、効率を重視するとともに、個々の担当者にコンサルティング能力が必要だからである。

 しかも、郵便局を訪れるお客は70代以上の高齢者がメーンである。先行して価格競争をしかけた楽天だが、競合がどんどん追随した結果、今では各社の価格差はほとんど無くなっている点もその難易度を上げている。

 もちろん、百戦錬磨の三木谷浩史会長兼社長だからなんらかの手立ては打っているだろう。だが、こうした経験をした当事者としては、郵便局がドコモやauSoftBankショップのように変化するイメージは全くない。AIを設置するなどといっているようだが、どこに、どのようなAIをおくのか。そんなことが簡単にできるなら、とうの昔にドコモやSoftBankがやっているだろう。結局、この資本業務提携は、携帯事業参入による投資資金をさらに必要とする同社が財務基盤を強化するために、資金調達先としてよいスポンサーを見つけたというのが本音ではないだろうか。

 

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