「やる気にあふれた人は採用しない」1日100食限定「佰食屋」の異色人材採用術

2020/06/02 05:55
佰食屋 中村朱美

「1日100食」しか売らない売上至上主義と決別し国産ステーキ丼専門店「佰食屋」。どんなに売れても100食という制約が労働時間短縮で残業ゼロ、フードロスでの経費削減、給料は百貨店並み―と既存の飲食店のビジネスモデルや常識を一変させた。その「佰食屋」は採用方針もユニークだ。やる気に満ち溢れた人材はあえて採用しないという。その狙いはどこにあるのか。創業者、中村朱美氏の著書「売上を、減らそう。」からその一部をお届けする。

kazuma seki / istock
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「どんな人も即戦力になる」 やる気に溢れている人なんていらない

 経営者の方と話をしていると、よくこんな声を聞きます。「優秀な人材は大企業志向で、なかなかウチの会社に来てくれない」「最近の若者は採用してもすぐに辞めてしまう。堪え性がない」。

 たしかに、いまは労働者人口も不足し、特に中小企業にとっては、人を採用するのもひと苦労な時代です。せっかく採用した人がすぐに辞めてしまえば、そう愚痴を言いたくなるのもわかります。しかも、わたしたちが属しているのは、より深刻な人手不足に直面する飲食業界です。講演でも「どうやって従業員を採用しているのですか?」「教育はどうされていますか?」と頻繁に聞かれます。

 佰食屋は、基本的にハローワークでしか求人を出しません。多くの企業が採用広告にかなりのお金をかけているようですが、わたしたちの会社は「掲載料 0 円」です。そうお答えすると、「ハローワークだと、なかなか採用基準を満たすような人が見つからない」「もっと仕事ができる人を採用したい」などと返されることもあります。

 そもそも「仕事ができる人」って、どんな人でしょうか。「営業をバリバリ頑張ります!」と意欲的な人。「もっとこういうふうにしたら売上が伸びるのではないでしょうか?」と自ら企画やアイデアを提案できる人。きっとそんな人は、いろんな企業から引っ張りだこでしょう。けれども、佰食屋ではそういった方は採用しません。

 実際、「報道で佰食屋を知った」という地元の大学生が「新卒社員として採用してもらえませんか」と電話をかけてきてくれたのですが、夫は「テレビを見てすぐに電話をかけられるくらいの行動力があるなら、絶対ほかの会社がええで」と断っていました。

採用基準は いまいる従業員と合う人

 佰食屋の採用基準は、「いまいる従業員たちと合う人」。

それだけです。

 面接では、一人につき 1 時間くらいかけて、どんなふうに働きたいのか、どんな暮らしをしたいのか、じっくりと話を聞きます。そしてその人が「なるべくたくさん働いて、たくさん稼ぎたい」と考えているのなら、「きっとうちの会社では物足りないと思う」と率直に話します。「100食限定」と決めているのに、「もっと売りませんか?」というそのアイデアで、いまいる従業員たちを困らせたくないのです。

 そうやって説明すると、その方も「じゃあ、ほかを受けてみます」と納得してくれます。そんなふうに、一人ひとりときちんと向き合って、面接を行なっています。

 佰食屋で採用するのは、どちらかというと、人前で話したり面接で自己PRしたりするのが苦手で……つまり、ほかの企業では採用されにくいような人です。

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