キャッシュレス化が起こす創造的破壊! アマゾン銀行が誕生したら我々はどうなるのか!?

2019/07/14 05:15
    阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
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    アマゾン経済圏の拡大を、金融事業が加速させる!

     実際、今年6月に入ってから、Facebookによる仮想通貨「Libra(リブラ)」が発表されました。Facebook2020年までに仮想通貨「Libra」を発行すると発表すると同時にデジタルウォレット「calibra(カリブラ)」も公開。ユーザーはこのウォレットアプリを通じて暗号資産「Libra」の購入および入出金ができるようになります。Facebookは、このLibraによってスピーディかつ便利な支払いや送金サービスを実現しようとしているのです。

     Facebookには膨大な個人のデータがあります。現時点では購買データは含まれませんが、個人の誕生日や出身大学、あるいは職業、職場までわかります。これに購買データまで紐づけば、クレジットヒストリー(信用履歴)の構築もできるようになるでしょう。つまり、各種金融規制さえ除外すれば(これがいちばん難しいわけですが…)、各種貸付をFacebookが行ったり、仲介することが可能になると思われるのです。理屈上、銀行の三大業務である「金融仲介」「信用創造」「決済機能」のすべてを満たせるようになるわけです。

     これと同じように、あらゆる産業界のディスラプターであるアマゾンは、ワンクリック決済やアマゾン・ゴーで実践済みの「『取引している』ことを感じさせない」サービス提供などによるカスタマーエクスペリエンスを金融面でも提供することで、お客がもっともっと集まるプラットフォームになっていくことをめざすでしょう。

    アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ

     本書では、「『セレクション(品揃え)を増やす』、すなわち多くの商品を取扱い、お客様にとっての選択肢が増えると「お客様の満足度が上がる」。満足度が上がると「トラフィックが増える」、つまりアマゾンに人が集まる。すると『そこでものを売りたい』という販売者が集まる。ますます『選択肢が増え』『お客様の満足度が上がる』。これがアマゾンの経済圏が成長していく循環構造になっています」「アマゾンの金融事業とは、この循環構造を強化するかたちでアマゾン経済圏の拡大を促すものです」と喝破しています。

     つまり、アマゾンは金融事業をあくまでも取り扱いアイテムやサービスの一つとして位置づけていることがわかります。それ単体で利益を生む必要がないとしたら、既存の金融業者にとってこれほど恐ろしいものはないのかもしれません。アマゾンに飲み込まれる世界はまた一歩、近付いていると言えるでしょう。

     

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    記事執筆者

    阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

    マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

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