シーイン模倣騒動と大差ないアパレル業界のパクリ体質 シーインがそれでも勝つ理由

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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シーインが「ロゴ」酷似の商品を作る、AIのアルゴリズム 

 さて、シーインを訴えているブランドの1つにベイエリアで誕生した人気ブランド「CookiesSF」がある。

 このCookiesSFの訴訟が、米国で騒がれたのは、この訴訟が商標権侵害でなく、偽造罪訴訟だったからだ。米メディアSourcing Journalは11月、以下のように報じている*。

there’s the matter of the violation in this incident, which is so apparent to the naked eye that Cookies is suing for counterfeiting, not just trademark infringement, which could result in triple the damages.」

 もしこれが偽造罪であればシーインが払う罰金は3倍になるだけでなく、アパレルビジネスのそもそものビジネスフローに大きな影響を与える可能性があるということで、産業界が大きくざわめいたようだ。しかし、元記事や「CookiesSF Shein」で画像検索して、よくみてもらいたい。確かに、これはアートワークではないが、「ブランドロゴ」の模倣のようであり、必ずしもデザインの模倣とはいえないと思う。もちろん、判決はでておらず安易な結論は語ることができないが、私はここで一つの結論に達したのである。

*Sourcing Journal, Experts Say This Lawsuit Could Force Shein to Stop the Steal

  その結論とは、シーインのビジネスは、AIによる「売れ筋ヒットの理由分析」であり、これは、「商品コード」で初速を追いかける日本のQRとは大きく異なる。余談ながら、ZARAも「ヒット要因」を追いかけ、決して商品コードを追いかけてはいない。世界の常識は日本の非常識で、日本が誤訳から戦略の誤謬を引き起こし負けている要因になっているということなのである。

  ここからは、私の推測になるが、仮にシーインがAIによるヒット要因を、この「ロゴ」に求めていたとしたら、全てがスッキリと説明可能だ。例えば、単なる1500円のポロシャツに馬のポロマークをつければ、ラルフローレンに酷似したものとなり、価格は15,000円に上がる。極めて洗練されたAIは、ヒット要因を読み取り「ロゴ」にヒットの理由を見いだしたと考えられる。つまり、AIのアルゴリズムが、我々日本人の知恵を遙かに超えているため、このようなことが起き、また、メディアの適当な報道が状況を矮小化、短絡化させて悪者、良い者を別ける短絡的な判断に至ったと考えられるわけだ。

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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