商品経営に徹して強力なDSと伍して戦える高質SMモデルをつくる=いちやまマート三科社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
構成:小木田 泰弘
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 当初は集荷できるか不安でしたが、取り組みを始めてみるとオーガニック野菜の生産者さんは結構多くあり、それほど苦労せずに商品を調達することができました。ただ、オーガニック野菜は通常の野菜の2倍ほどの価格になってしまいますから、お客さまから支持を獲得するには時間がかかります。低価格なオーガニック商品の仕入れ先を開発することも同時に進めています。

 店舗では、青果売場のいちばん目立つ場所にオーガニック野菜コーナーを設けていますから、売場効率は下がってしまいます。しかし、オーガニック野菜の購入を目的に来店されるお客さまもいらっしゃって、徐々にファンが増えてきていると感じています。

──6月から8月にかけてオーガニック野菜の生産農場を訪ねるバスツアーを実施したそうですね。

三科 そうです。一般のお客さまはオーガニック野菜のことをほとんどご存知ありませんから、まずは啓蒙することが大事だと考えています。農薬にしろ食品添加物にしろ、「体に悪い」とはっきりと認識している人はほとんどいらっしゃらないのが現状です。

 バスツアーは、店舗ごとに参加者を募り全12店舗で実施しました。農場を見てもらい、山梨県で有名なフランス料理店にオーガニック野菜を持ち込んでランチを召し上がっていただくという内容です。1店舗当たり24人までで、3000円の有料ツアーでしたが全店ですぐに申し込みがいっぱいになりました。

──お客の啓蒙に加えて、オーガニック野菜を販売するためには従業員の専門知識も欠かせません。

三科 おっしゃるとおりです。当社は、従業員を「人財」と考え、教育分野へ積極的に投資をしています。ねらいはもちろん、従業員に専門的な知識を身につけてもらうことです。オーガニック野菜のバスツアーには、店長や従業員、来年度に入社する予定の内定者にも参加してもらいました。

 当社の店舗は、ナチュラルチーズやワインなども豊富に取り揃え、専門店にも負けない品揃えが強みです。それらの商品を販売するためには、お客さまから質問があればすぐに答えることができなくてはなりません。比較的高単価な「こだわり商品」を販売するためには「販売力」が必要になります。「人財」を専門家に育成し、そしてお客さまに商品を提案して新たな需要を創造していく。そうすることで競合店に負けない「高質SM」が実現できると考えています。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

構成

1979年生まれ。2009年6月ダイヤモンド・フリードマン社(現ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」誌の編集・記者を経て、2016年1月から「ダイヤモンド・ドラッグストア」誌副編集長、2020年10から同誌編集長。

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