店舗にMDや売価設定の権限を移譲、個店経営で良質スーパーを追求=東武ストア宮内社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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──店舗運営の方法も大きく変更しましたね。

宮内 そうです。当社が展開する店舗は、売場規模をはじめ、立地や競争状況によって売上や利益がそれぞれ異なります。したがって本部が決めた全店一律の施策ではなかなか競合店に対応できません。そこで各店舗が競争環境によって異なる戦術をとる「店舗ごとの戦い」の施策を打ち出し、店舗へ大幅な権限の移譲を行いました。

 品揃えは基本的に商品部が立案しますが、売価の設定やどの商品を実際に導入するのかは店舗の判断で行えるようにしました。

 経費も自店でよりコントロールできるようにしました。たとえばパートさんを増やして単品を売り込む、またはパートさんを少なくするなど、店長権限でできるようにしています。競合店が低価格を強く打ち出すなら売価を引き下げる──など、店舗が競合状況によって自ら戦術を考えて動ける態勢にしています。

営業幹部会議で店舗をしっかりサポート

──個店への権限移譲を進める中で、店舗(店長)の評価はどのように行っていますか?

宮内 営業利益予算の達成度合いで評価します。これまでの予算は、本部がはじめにベースとなるものをつくっていました。今期は、まずは店舗で予算を作成してもらい、本部とすり合わせを行ったうえで目標値を設定するように改めました。

 店長に売上だけでなく、粗利益額、経費にも責任があるとことを再認識してもらい、営業利益に対する意識を高めることがねらいです。これまでも店長の評価は営業利益の予算達成が重要項目でしたが、よりいっそう重きを置いたかたちです。

──本部の機能はどのように変化しているのですか?

宮内 商品部を含めて、本部の人員がしっかりと各店舗をサポートする態勢を敷いています。

 たとえば、これまでのグループマネージャー(GM)会議に代えて、店舗ごとの営業利益の改善策を検討する営業幹部会議を10年9月に創設しました。

 従来のGM会議は、商品部や店舗運営部、GM、店長が出席し、前週の取り組み内容の確認、今週の指示事項の徹底をメーンした会議でした。たとえば、「○○を売り込もう」など、単品の販売計画を主に話し合う場であり、利益の確保という視点が欠けていました。

 そこで営業利益の落ち込みが大きい店舗を本部が選定し、具体的な改善策を議論するように会議の内容を改めました。本部から具体的な指示を出し、商品部が中心となって店舗をフォローします。そして1ヵ月後に実績数値を確認し、改善が見られなければ引き続き手を打ちます。商品部には部門ごとの粗利益額予算の責任を持たせているため、店舗と商品部の連携強化にもつながります。

 営業幹部会議は、売場規模や業態別に全店舗を6グループに分け、毎月1回、各グループから1~2店選定して合計10店ほどの改善策について話し合っています。前年度の下期は営業利益の改善が見られましたので、今期も継続します。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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