21年度は1兆5000億円突破か、工場潜入でSheinの実態を暴く!
Sheinを生み出しているのは日本のアパレル
もう1つ、われわれが正しく知らなければならないことがある。それは、中国の進化は確かに目を見張るほどだが、これまでの「不可能」を「可能」に変えるほど、1つの国だけが途方もない未来を歩いているわけではない、ということだ。具体的に言えば、3日で3000SKUもの量産を企画から配送まで可能になるなどという「神話」である。
確かにコロナ禍に入って2年が経ち、海外にも思うように行けないこともあって、中国には「スマートファクトリー」で、ビッグデータから渡された精緻なマーケティングデータを解析し「3日で3000SKU」を生産できるという神話ごとを語るアナリストやコンサルタントがいるのは分からないでもない。しかし、これは技術の進化の問題ではなく、物理的なものづくりの過程における制約の問題なのだ。紡績、染色、パターン、裁断、縫製、洗いなどを実際に見ていなければイメージできないのも分からないでもないが、こうした情報で過剰在庫を積み増す付属企業がいるのも事実なのだ。仮に原材料から調達して商品をつくり納品するためには、物理的に4ヶ月はかかる。
空想の世界を行ったり来たりしても拉致があかないので、私はネットワークを使い、Sheinの工場潜入に成功した。さらに、彼らが活用している中国版PLMベンダーにもヒアリングも行い裏取りもした。
Sheinが行う2タイプのMDとは
SheinのMDの正体は2タイプに分かれている。
タイプ1はSPA型MD。まず日本をはじめ先進国が残した膨大な残反を、中国版PLMを使い広州全土の協力工場をクラウド・オンラインで結び、それぞれの工場がどの程度の残反を持っているのかをシンガポールのビッグデータにアップロードさせる(スマートファクトリーではない)。その結果、Sheinは、どの工場にどれだけの残反が残っているのかを把握し (これもPLMの標準機能だ) 企画から生地調達までを7日という超短納期で縫製工場に放り込む。
タイプ2は、中国全土に出回っている「残品」を安価に買い付け、ブランドネームを付け替えて販売する中国版Shoichiモデル・バイイング(MDとはSPAに使う用語)だ。
以上、2つのモデルミックスを行っていることが明らかになった。さらに、中国本土の情報筋によれば、Sheinの21年度決算は、なんと1兆5000億円を超えユニクロやZARAを射程距離に入れたとのことだ。もちろん、中国のことだ。どこまで正確な数字か疑わしいが、現地の繊維商社マンによれば、Sheinの売上推移は、2019売上$18億、2020 $68億、21年$150億とのことだった。
また彼らは、生産工程のすべてに「Shein型標準コスト」を割り振り、工場に確認する前に、彼らのシステムで自由にコストを算出しCADとつないでいる。この結果、サンプルもつくらないで、製造原価を正しく計測し売上計画が立てられるようになっている。また、協力工場にはそのコストでやらせるように強いているとのことだ。なんとも、中国らしいやりかただが、彼らの平均FOBは米$2.00であることも判明した。オペレーション・ガバナンスから想定するに、SPA型MDは全体の10%以下 (日本の1500億円のアパレルと同じ規模)と想定ででき、90%は想定通り残反、残品の買い付けであるという見解で、我々は一致した。
彼らが使っている工場は、20-30人の小規模工場で(現地ではShein クラスターと呼ばれている)、数千社も密集する団地のような縫製工場をクラウド・ネットワークで結び、あくまでも小ロット生産にこだわっている。これは、残品の買い付けや残反を使っていることから、「売り切れ御免 x 小ロット」にならざるを得ないのではないかと思われる。また、Sheinは、クーリエによる物流を、国ごとに変え、例えば米国にはFedEx。日本にはEMS (国際郵便で、共産主義と相性が良く、商社は中国へ送るときはEMSを使っている)など国の事情によって、国際郵便をベースにクーリエを替えている。
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