アマゾンとアップルが近い将来、アパレル産業のプラットフォーマーになる理由と戦略とは
10年後企業数は半分になり、ファストリ、伊藤忠商事、外資系企業が残る
今度は視点を川上に向けると違った景色が見えてくる。拙著『生き残るアパレル死ぬアパレル』のおかげで、日本の生産工場の産地や「国産PLM」のスタートアップ企業から問い合わせをいただくようになった。「国産PLM」ベンダーも、既存のビジネスモデルを前提とした「改善」に毛が生えたようなもので、そもそもアパレル企業の競争力を上げるためには、どのようなビジネスモデルがあり得るかという発想もない。当たり前だ。世界の潮流にあまりに無知だからだ。
商社は、三菱商事を除く財閥系は繊維・アパレル事業からほとんど撤退し、専門商社も私が見る限り、産業をダイナミックに変えてゆこうという意識をもっているのは中間管理職だけ、それより上の階層の人々はますます縮小するOEM市場にしがみつき収益が悪化しているようだ。結局、この業界で、日本企業で残るのは、ファーストリテイリング社と非財閥系の伊藤忠商事、あとは、出ては消えてゆくSME (5-100億程度の中小企業)と外資系企業だけになるだろうと思わざるを得ない。最近は、不動産企業や外資金融、EC企業など、アパレル産業以外の企業から「なんとか産業を活性化したい」という話がくるようになってきた。政府のバラマキも限界に達し、昨年のように金を湯水のように貸すことはもはやないだろう。春から夏にかけて、大きな買収攻勢が起きると私は思っている。
ファーストリテイリングが、2022年8月期第1四半期決算発表の質疑応答で、投資銀行から「現金を持ちすぎではないか」と問われたが、彼らは「我々は在庫を持つ事業だ」を繰り返していた。別の人が追加質問で「素材備蓄に使うのか」と聞いたのに対しファーストリテイリング側は否定をしなかった。
「今後何が起きるか分からない環境」で、また、「3つの回転率」がバラバラに動く時代である。従来の「借金してでも投資をしろ」という考えはあらためる必要があると思う。今は、ある程度の蓄えを持ち、産業が停滞している時こそ投資に打って出る体力を温存する、新しいファイナンス理論が必要となるだろう。
河合拓のアパレル改造論2022 の新着記事
-
2023/01/24
「大ディスカウント時代が到来」 この意味が分からないアパレルの未来は悲観的な理由 -
2023/01/17
H&MやZARA等が原価下回る価格で取引を強要 SDGs時代にこんなことが起こる必然の理由 -
2023/01/10
ビッグデータを制する企業が勝利する理由と、M&Aできない企業が淘汰される事情 -
2022/12/27
2023年のアパレル大予測 外資による買収加速・DX失敗・中国企業に完敗、が起こる理由 -
2022/12/20
中国企業傘下の仏メゾン「ランバン」米国で上場 いまや中国企業に追いつけない理由 -
2022/12/13
過去のヒットからAIが予測し売れる服を自動生成!?アパレル業界の課題とこれからとは
この連載の一覧はこちら [55記事]
ファーストリテイリング(ユニクロ)の記事ランキング
- 2025-03-12ユニクロ以外、日本のほとんどのアパレルが儲からなくなった理由_過去反響シリーズ
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2025-11-04ユニクロの「棚割り」に見るインクルーシブMDへの“覚悟”
- 2021-03-05ビジネスは「一勝九敗」 ファーストリテイリングを世界的大企業に導いた“柳井哲学”
- 2022-11-29シーイン模倣騒動と大差ないアパレル業界のパクリ体質 シーインがそれでも勝つ理由
- 2021-05-11キーワードは科学、製販統合!「無敵のユニクロ」を凌駕する「知る人ぞ知る」ファッション商品
- 2021-05-18全産業中ワースト2位の不都合な真実、アパレル業界の環境破壊と人権問題を解決する方法
- 2023-08-28ユニクロと東レとのサステナブルな関係から生まれたリサイクルダウン
- 2023-11-14GMS衣料のジレンマと真実!イトーヨーカ堂アパレル完全撤退の必然とは
- 2024-09-27ユニクロが中間価格帯になったことに気づかない茹でガエル産業アパレルの悲劇_過去反響シリーズ
関連記事ランキング
- 2025-11-25ワコールを追い詰めた「三つの革命」
- 2025-12-02HUMAN MADE上場から考えるファッション産業の構造的限界
- 2025-11-27急拡大するリカバリーウエア市場を攻略する
- 2024-09-17ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
- 2025-03-12ユニクロ以外、日本のほとんどのアパレルが儲からなくなった理由_過去反響シリーズ
- 2025-11-24間違いだらけのアパレルDX改革、根本から変えるべき「KPIの設計哲学」
- 2025-11-26業態別 主要店舗月次実績=2025年10月度
- 2021-11-23ついに最終章!ユニクロのプレミアムブランド「+J」とは結局何だったのか?
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2022-04-22ユナイテッドアローズ重松理名誉会長が語る、創業秘話とビームスを立ち上げた理由とは
関連キーワードの記事を探す
国内ユニクロ事業が売上収益1兆円を突破 ファーストリテイリング本決算を徹底分析
アパレル売上ランキング2025 ファストリの売上高3兆円台に!
百貨店を生活商圏型SCに転換!「ららテラス川口」の全貌と戦略とは?





前の記事
