第7回 店のスタッフ、医師、管理栄養士…「専門家の声」で購買の後押しをする方法とは

2022/01/28 07:00
    倉林 武也
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    ショッパーや小売業のインサイトを捉えたアサヒオフの企画

    アサヒ オフ

     筆者は企業とショッパーインサイトを題材にワークショップを行う際に「インサイトを見つけて売場や売り方の展開を行う上で、お客さまに商品を手に取って買ってもらうためには、『どんな人』の言葉や説明があればいいか?」と言う投げ掛けをする。この購買の後押しをしてくれる「人」のことを私は「購買を応援してくれる人」と呼んでいるのだが、これは、時にお医者さんだったり、専門家だったり、主婦の皆さんだったりとさまざまなケースがある。インサイトが「人が行動をするためのスイッチ」だとしたら、この応援をしてくれる人の存在はスイッチを押す上でも大きな後押しや決め手となる。最近、各種書籍で『行動経済学』が話題だが、その1つに「人はお墨付きがあると意思決定や行動が早くなる」というものがある。お客が店頭で買うべきか買うべきでないか、あるいは何を買うか迷っている時、こうした権威や専門的な知識を持った人の声やお薦めがあると決断が早まるのである。

     ここで紹介する「アサヒオフ」はプリン体ゼロ、糖質ゼロ、人工甘味料ゼロ、カロリー最少級(22Kcal/100mlあたり)の新ジャンル商品だ。プリン体や糖質ゼロから健康によさそうな印象を持つが、ショッパーに「この商品を訴求する上で、応援をしてくれる人」として、管理栄養士を起用した。この商品の特徴であるさまざまな「成分ゼロ」を伝える以上に、資格を持ち健康に関する専門知識を有する“管理栄養士によるお墨付き”がショッパーの買い物行動を変える効果が期待できるからだ。

     そこで現役の管理栄養士263人にサンプリング・アンケートを実施。「食事について専門家のアドバイスを必要としている(生活習慣病や高血圧・高脂血症・高尿酸血症などへの対策・予防される方などを想定)アルコールユーザーにお薦めしたいと思いますか?」と質問したところ、100人以上(237人)が「薦めたい」と答えていることから、「管理栄養士100人が推奨する新ジャンル」としてPOP等に活用している。このPOPの店頭における設置率も、10店舗を視察した中で9店舗に設置されているなど、非常に高い結果を示していた。

     なお、以前ショッパーに対して「買い物をする際に、誰の声や意見を参考にしますか?」と尋ねたところ1位は「親しい知人や友人の声」、2位「お店で働くスタッフや店員さんの声」、3位「専門的な知識を持つ人の声」となった。これは、機能性商品に関して全般的に言える傾向と合致しており、ビールや発泡酒、そして新ジャンル商品において健康を意識するショッパーのインサイトを追求すると、似通った内容にたどり着くことが想像できる。

     このうち1位と2位からは明確な根拠を得にくいため、商談や広告に活用できるかは未知数である。そうなると3位の「専門的な知識を持つ人の声」を活用し、大抵はエビデンスに頼り「数値・データ」やそれを導いた「開発」「技術力」にフォーカスをしがちだが、ショッパー視点からそれらを見ると分かり難く「私にはピンとこない」「伝わり難い」と言う結末に至ることが多い。

     これは同時に小売業のバイヤーや販売促進担当者からも、同様の反応をされてしまう危険性がある。その点、「インサイトを見つけて、それを分かり易く応援してくれる人の存在や起用」があれば、そうした課題(伝わり難さや分かり難さ)を解消してくれる可能性があるだろう。

     管理栄養士、料理研究家、医師、研究家や大学教授や各種専門家を起用することは、ショッパーに伝える方法や表現を工夫するうえで効果が高まるだろう。

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