第7回 店のスタッフ、医師、管理栄養士…「専門家の声」で購買の後押しをする方法とは

2022/01/28 07:00
    倉林 武也
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    日常の料理や料理をする人の中にあるインサイト

     最後に取り上げるのは旭化成ホームプロダクツが展開した「#真実のレシピ」。食品売場では、季節(旬)や歳時や平日・週末と言った様々な切り口によるメニュー提案がされている。最近ではクックパッドの様に軽快な音楽をBGMにして数分で料理動画を端末で紹介するケースも珍しくなくなった。コロナ禍による在宅時間の増加から、店頭の端末に限らずにパソコンや自分の携帯端末などを使用して料理動画やレシピを参考にしている人も急激に増えていると報道されていた。

     そうした中、サランラップやクックパーなどの家庭日用品を多く扱う旭化成ホームプロダクツがレシピの「行間」に隠れた真実に光を当てた「#真実のレシピ」を企画した。
    (以下は旭化成ホームプロダクツのウェブサイトに掲載の内容から)

     当プロジェクトでは、週に5回以上料理を行う20歳以上の300名を対象にした「#真実のレシピ」調査を実施したところ、約9割が「調理時間以外の準備も含めて料理だと思う」と回答。また、「献立を考える」や「後かたづけ」を含めると合計料理時間の平均は133分。その料理時間の64%は、調理以外の時間だと判明。

     忙しなく、ドタバタと家事に向き合う現代の人々。特に、料理には、レシピに書かれることのない「行間」が多数存在する。調理時間以外にも、買い出しから食材の選別、後かたづけまで。その間にも様々なハプニングが発生する。そういった、忙しない日常に隠された愛を表現したいと考えた時に、国民的キャラクターである「サザエさん」の生きる姿勢には、現代人とも共通する点があると考えた。

     サザエさんは、家事をこなしながら弟妹の面倒を見たり、タラちゃんの世話をしたり。お買い物に行く途中で財布を忘れたことに気づいて取りに帰る。そんなあわただしくも一生懸命な姿は、現代の家事と向き合う人とも共通する「愛」の部分なのではないだろうか。

     また、WEBにおいても3つの異なる家庭を舞台に、「#真実のレシピ」を映像で再現した90秒のCMを公開している。「料理をしている途中で子どもに呼び出されて料理を中断」「給食とメニューが被っていることに気づいて急遽メニュー変更」「食材の買い出しで食材が売り切れだと気づく」など、調査を通して実際に寄せられた声も参考に制作。料理する本人でさえ見過ごしがちなレシピの「行間」に隠れた愛や想いを映像で表現する。

     1つの家庭にフォーカスした30秒バージョンも併せて公開。料理のレシピの行間に注目したこれらの取り組みは、日々仕事や家事に忙しい中で料理をする人のインサイトをキチンと捉えている。CMはまだWEBで見ることができる。

     商品やサービスの開発、売上アップにつなげるためのコンシューマーやショッパーのインサイトを見つけるには大変な手間や相応の時間を要する。インサイトを導く知識やスキルの習得にも準備や経験が必要なことから、進め方のフレームワークの活用や異なる企業がインサイトを捉えた上質な展開を共有することは、それらのスピードや精度を上げることに大きく役立つだろう。

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