アマゾンの顧客リーチ拡大(オムニチャネル)戦略(4)

2014/11/25 00:00
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 先週金曜日からの続き。本日がこの稿の最終回です。

 

 米国ではマンハッタンにリアル店舗を出店するというニュースが流れたアマゾン・ドットコム―ー。

 アマゾン ジャパン(東京都/ジャスパー・チャン社長:以下、アマゾン)の顧客リーチ拡大戦略としても、外せないのはリアル店舗との連携だ。

 

 とくにアマゾンが注力しているのは、業務提携による【Online to offline(O2O:オフライントゥオンライン)】の構築だ。

 

 11月5日のBLOGでも紹介した通り、アマゾンは、コンビニエンスストア大手のローソン(東京都/玉塚元一社長)との協業を発表。その第一弾として静岡県内のローソン(全199店舗)でマルチメディア端末「Loppi(ロッピー)」を通してアマゾン商品の注文を可能にした。この先、さまざまなO2Oの取組が多岐にわたって展開されるものと予想される。

 

http://diamond-rm.net/articles/-/11375

 

 アマゾンは、ローソンのほか、ファミリーマート(東京都/中山勇社長)とも「ネット注文→受取はコンビニエンスストア店頭」サービスを実施している。

 商品代金の支払だけであれば、セブン‐イレブン・ジャパン(東京都/井阪隆一社長)、ミニストップ(千葉県/宮下直行社長)、サークルKサンクス(東京都/竹内修一社長)ともパートナーシップを組んでいる。

 

 そして、11月13日には、購入した商品をヤマト運輸(東京都/山浦雅喜社長)の全国に点在する集配センター約3000か所で受け取れるサービスをスタートさせている。

 

 アマゾンのO2Oは、それだけではない。

 ネットで購入して、取り付けなどのサービスを店舗で受けるといったことも実施している。

 典型的な商品はクルマの「カーナビ」だ。従来、消費者は安価で購入したはいいが、どこで取り付けていいものか分からなかった。

 そこでアマゾンは、オートバックスセブン(東京都/湧田節夫社長)や宇佐美鉱油(愛知県/宇佐美三郎社長)、カーコンビニ倶楽部(東京都/林成治社長)と提携。全国数千か所のサービスセンターにてアマゾン経由で購入した商品を取り付けてくれる有料サービスを提供している。

 

 またO2Oということでは、米国のみで展開している「アマゾンロッカー」(order online and pick up here)の存在も見逃せない。商品引き渡し用の専用ロッカーで、コンビニエンスストアや食品スーパー、専門店などと契約して、アマゾンが店舗の片隅に設置するものだ。

 詳細についでは2013年12月27日のBLOGに書いているので、そちらを参照されたい。

 

http://diamond-rm.net/articles/-/9607

 

 そして、アマゾンの顧客リーチ拡大戦略として最後に記しておきたいのは、【デジタルデバイス】の存在だ。

 

 米国では、2014年7月25日にアマゾンのスマートフォンである「ファイアフォン(Fire Phone)」を発売した。失敗に終わったと報道されている「ファイアフォン」ではあるが、その中身を見ていくと、アマゾンにアクセスしやすいような仕組みが多々内臓されている。

 

 主要機能1:「ファイアフライ(Firefly)」は、カメラやマイクを使って、いつでもアマゾンの商品を検索できるシステム。書籍やDVDのジャケットなど7000万以上の商品を認識。音楽が流れているところで「ファイアフライ」ボタンを押すと曲名を表示したり、楽曲をダウンロードしたりできる。

 

 主要機能2:「ダイナミック・パースペクティブ(Dynamic Perspective)」は、顔の位置を認識して、奥行きある画面を表示する機能である。

 

 そして、主要機能3:「メイデイ(mayday)」は、24時間、365日のビデオ通話による有人サポートするサービス。クリックすると、直接アマゾンのカスタマーサポートのオペレーターにつながり、ライブでチャットができる。「ファイアフォン」の利用方法が分からない、レストランの予約してほしいなどコンシェルジュのようなかたちで、サービスを提供している。

 

「メイデイ」サービスは日本でもスタート。日本では「ファイアフォン」はまだ発売されていないが、タブレットである「kindle(キンドル)」の新製品「キンドルファイア」はワンクリックすると、同じように日本のオペレーターにつながり、いろいろなサービスを受けることができる。

 

 さて、4日間にわたって、アマゾンの顧客リーチ拡大(オムニチャネル)戦略5項目について見てきた。

 

 このBLOGの読者には、アマゾンを「ネット書店」と認識している方は1人もいないと思うが、アマゾンは、オムニチャネルの領域においても、日進月歩であることが分かっていただけたのではないだろうか?
 

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