京都のお茶漬けの名店を探訪! 京都人の「ぶぶ漬けどうどす」は現在も生きているのか?

2023/10/27 05:59
森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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京都の人の家へ行き、しばらく時間が経ったところで「ぶぶ漬け(お茶漬け)どうですか?」と勧められたらいかに対応すべきか。正解は「そろそろお帰りください」の意味なので、「すぐにでも“おいとま”する」だ。では京都人に対し「お茶漬けを食べに行きませんか」と逆に誘ったらどうなるか。今回は、そんなことを考えた企画である。

京都人にお茶漬けを勧められたらどうすべきか

数々のビッグネームも来店

 京都の人は、思っていることを直接口にしないと言われる。テレビのバラエティ番組でも、京都人特有の言動が取り上げられる機会も多い。ドラマ仕立てで再現、「何を考えているか分かりにくい」「いじわる」と冗談ぽく紹介されているのを何度か見たことがある。

 そんな京都人の言動を象徴的するエピソードのひとつに「ぶぶ漬け」がある。

 家にお邪魔し、しばらく経って「ぶぶ漬けどうどす(どうですか)?」と聞かれたら、食べるべきか断るべきか。それは「そろそろお帰りください」を意味するので、すぐにお宅から失礼するのが礼儀であり、正しい。

 さすがに現在、「ぶぶ漬け」を勧められることはまずない。それでも京都に住んでいると「ぶぶ漬け的」なやり取りは今も生きていると感じる。1000年以上も都があった土地なので、昔の人の奥ゆかしさも相まって、独自の文化が形成されたと想像できる。

 さて今回は、お茶漬けの名店「丸太町十二段家」で食事をするという話である。

 公式Webサイトによれば、創業は大正時代。京都府北部、丹後出身の主人は当初、菓子職の経験を生かして甘党の店を経営していた。やがて客の求めに応じ、出したお茶漬けが評判となり、看板料理になったようだ。

烏丸丸太町交差点で立ち止まり、北東の方向に見えるのが「京都御所」

 京都市上京区──。地下鉄烏丸線「丸太町」駅の4番出口から徒歩2分のところに店はある。途中の烏丸丸太町交差点で立ち止まり、北東の方向に見えるのが「京都御所」。明治維新まで、歴代天皇がお住まいになられていた場所だ。

交差点を西へ約80m進むと店に到着する

 交差点を西へ約80m進むと到着する。屋号が書かれた古い木製の看板が掲げられているが、外観は地味で周囲にある住宅などの風景に溶け込んでいる。

外観は地味で周囲にある住宅などの風景に溶け込んでいる
屋号が書かれた古い木製の看板が掲げられている

 12時15分ごろだったため先客が数組あり、しばらく並ぶことになった。行列が徐々に短くなり、建物の中に入ったところでメニューが手渡される。お茶漬けは3種類があり、私は真ん中のグレードの「水菜」(2080円)を注文することに決めた。

お茶漬けは3種類があり、私は真ん中のグレードの「水菜」(2080円)を注文することに決めた

 待つ間、観察していると有名人も訪れていると知る。それもかなりのビッグネームが多いことに驚く。敬称略で恐縮だが、長嶋茂雄、アントニオ猪木、三國連太郎、衣笠祥雄、等々。サインのほか、写真も飾られている。中には、なんとヒゲを生やしたあの皇族の方も来店されているではないか。

 そうこうしている間に、順番が回ってきた。私は期待に胸を膨らませ店内へ入った。

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いざ実食!
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記事執筆者

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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