経済正常化が鮮明=価格転嫁進む、訪日客好調―続く物価高、消費腰折れ懸念・日銀短観〔潮流底流〕

時事通信社
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日本銀行
(i-stock/Manakin)

  日銀が13日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業と中小企業の製造業、非製造業でそろって改善した。原材料価格の高騰を補う価格転嫁が進んだほか、インバウンド(訪日客)消費も好調で、コロナ禍からの経済活動正常化が鮮明になった。ただ、先行きには物価高による個人消費の腰折れ懸念もくすぶる。

 ◇自動車がけん引  価格転嫁が進んだことなどを背景に、自動車や金属製品など大手製造業の景況感は大きく改善した。自動車のDIはプラス28と2014年3月以来の高水準。半導体不足の緩和で生産が回復し、「円安や原材料価格の落ち着きが追い風」(スズキの鈴木俊宏社長)となった。中小企業製造業でも「価格転嫁が進み、改善要因となった」(日銀関係者)という。

 大企業非製造業でも回復基調が目立つ。対個人サービスはプラス28、宿泊・飲食サービスもプラス51と改善。訪日客消費が好調な百貨店は、高額品販売が伸びて「売り上げは順調だ」(大手)と自信を見せる。

 ◇中小、先行き厳しく  ただ、価格転嫁の勢いには一服感が出ている。販売価格判断DIは大企業製造業で4期連続の下落、大企業非製造業では3期連続で下落した。小売りの現場では「さまざまな商品が値上げとなり、節約志向が強まっている」(ヤオコーの川野澄人社長)と警戒感が広がる。スーパー業界関係者は「おせち料理の販売が伸び悩んでおり、年明け以降が心配だ」と憂慮する。

 中小企業製造業では先行きに対する不透明感が強い。円安に伴うコスト上昇が収益を引き続き圧迫しており、「(取引先と)価格交渉はしているが、はね返されてしまい価格転嫁を十分にできていない」(金属加工)との不満がある。人手不足も深刻だが、「人を雇えるほどの利益は出ていない」(塗装製造)との悲鳴も上がる。

 ◇日銀、賃上げ動向注視  日銀が目指す賃金上昇を伴う2%の物価上昇目標の達成には賃上げの広がりが欠かせない。来年の春闘での賃上げについて、大手企業からは「積極的に考えていきたい」(ホンダの青山真二副社長)との声が聞かれる。中小への波及が焦点となるが、「来期は業績が不透明」(鉄工会社)などとして持続的な賃上げ実現のハードルはなお高い。

 マイナス金利政策の解除など大規模金融緩和からの出口を模索する日銀は、中小を含めた賃上げ動向を慎重に見極める方針だ。

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