「美食の街」香港で弁当拡大=外食制限、物価高騰が後押し―規制緩和後も人気維持予想

時事通信社
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弁当店「超人焼鵝」前の行列
〔写真説明〕弁当店「超人焼鵝」前の行列=2022年12月28日、香港・油麻地 時事通信社

 【香港時事】香港で、持ち帰り用弁当の販売店が拡大している。新型コロナウイルス流行に伴う外食制限を契機に、景気低迷や物価高騰も相まって人気に拍車が掛かり、「美食の街」は様変わりしつつある。

 九龍半島南部の油麻地。弁当激戦区の一つで、一時は300人以上が長蛇の列をつくった店もある。昨年5月末にこの地区に新店舗をオープンした「超人焼鵝」の女性従業員、張雪麗さん(75)は「コロナの影響で弁当を買って持ち帰るお客さんが増え、競争も激しくなった」と明かす。

 この店では肉や海鮮、野菜料理など約20種類の総菜を用意している。昼はボリューム満点の総菜2種類にご飯を付けて35香港ドル(約580円)。香港の平均的なランチ価格は50香港ドル前後とされ、弁当は格安だ。

 店舗数の公式統計はないが、弁当愛好家らでつくるグループはフェイスブックで人気店を共有し、店舗の名前や所在地、価格を記載した表も作成。現在470店以上を紹介しており、アカウント管理者は「おかずを選択できて、値段が手頃で十分な量があり、持ち帰りでも家庭料理みたい」なのが弁当の魅力と語る。

 持ち帰り用の弁当は昔からあるが、コロナ禍でメニューが充実し、味も向上した。客層は従来の低所得者や学生にとどまらず、金融街の会社員らにも拡大。住宅が狭く台所のない家庭もあるという香港の事情も、人気を後押しする。

 香港中文大商学部の古紀達副部長(ビジネス経済)は、弁当店の拡大について「政府がコロナ対策で店内飲食を制限したのが直接のきっかけ。外食時の感染リスクが大きいため、客は持ち帰って食べるようになり定着した」と分析。「サプライチェーン(供給網)の混乱で食品価格が高騰し、料理をするより弁当を買う方が割安になった影響もある」と解説する。

 香港では昨年12月、入境者に課していた到着後の行動制限が撤廃された。香港への出張や旅行が容易になったことで、来訪者が今後急増し、コロナ禍で苦戦していた飲食店も活気を取り戻すとみられる。

 それでも弁当業界は「コロナ禍が落ち着いても人気は続く」と強気の姿勢だ。古氏は、格安弁当が「香港人の柔軟性と創造性」を反映しており、「市場環境が変わっても淘汰(とうた)される可能性は低い」と予想している。

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