生鮮食品を売らないと意味がない!? プロが教える「儲かるネットスーパー」のポイント

高倉照和
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ネットスーパーの売上構成がグロサリー主体になるワケ

 ネットスーパーの売上構成が、グロサリー主体となっている一番の原因は、「購入単価のバー」にあります。5000円以上で配送料が無料になる、あるいは安くなるという、購入金額制限の問題です。

 購入金額5000円以上で無料なら平均購入単価はほぼ5000円になり、これが6000円ならほぼ平均購入単価も約6000円になります。なぜなら誰も配送料を払いたくないからです。プロスペクト理論と言って、人間は損をすることを避けるという本能が、得したいという欲求よりも2倍以上強いとされています。これにより、購入金額は配送料が無料になる金額近くに収斂されるわけです。

 ただ、1回当たりの購入単価を上げるということ自体はよいことです。問題なのは、それを実現しようとすると、生鮮比率はほぼ間違いなくグンと下がり、安売りのグロサリー主体の商品構成になってしまう点です。つまり、購買単価は上がるのですが、粗利益額が下がるのです。そして、物流費が高いのはどちらでしょうか。当然、購買単価が高い(=物量が多い)方となります。

 購入金額制限のバーを上げれば上げるほど、粗利益額は下がり、物量は多くなり、しかも配送費は上がる、という“三重苦”となります。これを意識しているネットスーパーの担当者は非常に少ないように思います。

 ネットスーパーの担当者の中には、「儲からない原因がわからない」という方が多いのではないでしょうか。机上での理論を優先して、お客さまの心理を深く考えないとそうなってしまうのです。

 なぜ、リアル店舗の平均購買単価は2500円前後なのか。もしリアル店舗で5000円のバーを設けたらどうなるのか。こうしたことを深く考えるネットスーパー担当者は皆無でしょう。物流コストありきで、それをどうカバーするかという机上論にとらわれ、「お客さまに生鮮食品主体の買物をしていただくにはどうしたらよいのか」という視点が欠けているパターンを筆者は驚くほど多く見てきました。

SHIROKUMA DESIGN/iStock

購入単価バーを設ける致命的な欠点

 購入単価バーを設けるもう一つの致命的な欠点が、「月額の購買金額が結果として低くなる」ということです。たとえば、購入金額5000円以上で配送料が無料だとします。そうすると、お客さまはほぼ例外なく、単価の高い米やビールケース、飲料ケースなどでその金額をクリアしようとします。つまり、生鮮品を買う「普段買いマインド」ではなく、「まとめ買いマインド」になるのです。

 そうなると、結果として購買頻度は月に1、2回程になります。購入金額の制限が6000円だとしても、月2回ですと月当たりの購買単価は1万2000円です。一方、生鮮主体で月に8回程度のペースで普段づかいをしていただくと、1回の購買単価が3500円だとしても、月当たりの購買単金額は2万8000円にもなります。実に2倍以上の月額購買金額となるのです。

 大事なのはここからです。これが何を意味するかというと、「同じエリア内で2倍以上の売上がある」ということは「物流効率が格段に高くなる」ことにつながるということです。このように、高単価バーの設定ひとつを取っても、ネットスーパーの場合はリアル店舗とは異なるコスト構造(=収益構造)になります。こうした点に着目していくことがネットスーパー黒字化への道だと筆者は考えています。

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