AI画像認識とRFID活用で進む商品ロス不正対策
米国では中間層が減り、高所得者層と低所得者層が増えており、消費市場の二極化が進む。物価高騰が低所得者層の生活を圧迫しており、価格優位性のあるウォルマート(Walmart)やアルディ(Aldi)、コストコ(Costco)などの会員制ホールセラー、ダラーゼネラル(Dollar General)などのダラーショップは業績好調だ。一方で、店舗での万引き、窃盗などの軽犯罪が増えている。ウォルマート中心に米国小売はどう対応しているのか、そこから日本企業は何を学ぶべきか?
経営揺るがす商品ロスのインパクト
全米小売業協会(NRF)の調査では、組織的窃盗犯罪(ORC:Organized Retail Crime)を含めた、2022年度の商品ロス総被害額は1121億ドル(約16兆円)となっており、単純に万引きや従業員の不正だけでなく、集団による窃盗等が日常茶飯事になりつつある。
ウォルマートは23年4月、多額の商品ロスによりシカゴの4店舗の閉鎖を発表、同社のダグ・マクミロンCEOが「歴史的な万引き被害が、経営に大きな影響を与えている。値上げか、店舗閉鎖を余儀なくされている」と発言するなど、危機感をつのらせている。ターゲット(Target)も同様の理由から23年11月に9店舗の閉店を発表、ホールフーズマーケット(Whole Foods Market)のサンフランシスコの基幹店にいたっては22年3月に新フォーマット店をオープンしたにもかかわらず、わずか1年後の閉店を余儀なくされた。
急速にロスが増えている要因として、オムニチャネルの浸透、セルフレジの台頭も関連する。
ウォルマートは23年、シームレスでフリクションレスな「顧客体験の型」が完成したとして、ようやく「オムニチャネル宣言」をした。具体的にはピックアップ、店舗からの配達、センターからの配送などの買物手段の選択肢を増やし、スマートフォンを中心としたデジタルによる購買体験を確立。また有料会員「Walmart+」の会員限定として、過去2度撤退したスキャン&ゴー(Scan&Go)も再開した。

一方で、店頭でのチェックアウト(精算)では、セルフレジの拡大をめざしてきた。実は、パンデミックの3年の間に、ウォルマートは
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