大手小売が今後、クレカ国際ブランドから離脱していく“意外な”理由とは
「2025年のキャッシュレス決済比率40%」という政府目標の達成に向け、キャッシュレス化が加速する日本。コロナ禍を経て、23年のキャッシュレス比率はすでに約4割に達しており、キャッシュレス決済はある程度普及したといってよさそうだ。この先、決済はどこに向かうのか。日本のキャッシュレス化への課題、小売企業が展開する決済の動向などについて、決済の専門家、山本国際コンサルタンツ代表の山本正行氏に解説してもらった。
クレカ会社を悩ます「収益性の低さ」
経済産業省の発表によると、23年のキャッシュレス決済比率は前年から3.3ポイント(pt)増加し39.3%まで上昇した。20年時点のキャッシュレス比率は2 9 . 7 %であり、実に3 年間で10pt近く上昇したことになる。しかし、キャッシュレス化は世界的にも加速しており、諸外国と比較すると、日本のキャッシュレス決済比率は相対的に低位のままだ。
日本のキャッシュレス化に向けた課題として、クレジットカード会社の収益性の低さが挙げられる。クレジットカード各社は加盟店手数料に依存するビジネスモデルから脱却できずにおり、そのうえ加盟店手数料の引き下げ圧力がかかり、けして適正な状態とはいえない。このままでは、政府が将来的にめざす「キャッシュレス決済比率80%」の達成は難しいだろう。
日本のキャッシュレス決済は、加盟店手数料が諸外国と比べて相対的に高いにもかかわらず、収益性が低い。この問題の原点は、クレジットカードが金融ビジネスの一翼になっていないことにある。
欧米では「クレジットカードは金融」であり、リボルビング払いを基本とするため、収益性は必然的に高くなる。銀行がクレジットカード事業を運営し、リボルビング払いのための利息や手数料を消費者に課すとともに、加盟店には融資を実行するビジネスモデルになっており、加盟店手数料にあまり依存していない。
一方、日本では、消費者に利息や手数料が課されることはほとんどなく、むしろ利用金額に応じてポイントが消費者に還元されるケースが多い。消費者はポイント還元をベンチマークしてクレジットカードを選ぶ傾向があり、これが続く限り、その原資を加盟店に転嫁せざるを得ず、負のスパイラルから脱しきれない。ビジネスモデルは崩壊しつつあり、キャッシュレス化への足かせになるおそれがある。
そうした背景もあって、現在は、クレジットカード会社が市場拡大を推し進めるインセンティブを見出しづらい状況となっており、収益の確保を優先するためシュリンクする傾向も一部で見受けられる。この点で、三井住友カード(東京都/大西幸彦社長)は欧米型のモデルに近づこうとする努力がうかがえ、国内では「一人勝ち」ともいえるポジションを確立しつつある。国際ブランド(※)の「VISA」を抱き込み、近年は中小の加盟店も順調に増えてきた。
編集部注:世界で利用可能な決済システムのネットワークを持ったクレジットカードのブランドのこと。VISA、Mastercard、JCBなど。これに対して、主に日本で流通しているクレジットカードのことを「国内ブランド」と呼ぶ。セディナ、エポス、楽天カードなど。ただし、国内ブランドのほぼすべてが国際ブランドと提携しており、たとえば「VISA」のロゴが入ったカードであれば、VISAの決済に対応している店舗で利用することができる
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