ロイヤルホスト、「おもてなしの心」を充実させるためのDX戦略とは

千葉 哲幸 (フードサービスジャーナリスト)
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DXはホスピタリティを充実させる存在

 「ロイヤルホスト」では、これまでの経験から、DXはお客にとって店からのサービスを十二分に感じてもらうことが重要だという認識を深めている。

 その象徴的なできごとが、コロナ前の「セミセルフレジ」での経験だ。セミセルフレジ会計はお客にお金を入れてもらうのだが、導入当初は、「なんで私たちがお金を入れないといけないの」とお客に怒られたという。

 お客がレジの向こう側にいる従業員と向き合っている場合、従業員はお客と向き合いながら説明する。そこでアルバイトから「お客さまの隣に寄り添って説明をしてみてはどうか」という提案があった。その通りに実践すると、お客から「ありがとう」と感謝されるようになったという。

 その対応にお客は店の「おもてなしの心」を感じ取ったのであろう。そしてコロナ禍となり、「こんな衛生的なレジはありません」という言葉。「DXを導入して、ホスピタリティがより充実した」ことを感じ取っていただくことを学びとしている。

光が丘IMA店のゆったりとした客席の様子

 外食産業にとって「人員不足」は現実的な問題である。筆者は生田氏に「DXは人員不足を解消できるか」と尋ねた。すると、過去のリアルな経験からこのように述べた。

 「現場のたたき上げである私の立場から言えば、いつの時代も人員は足りていない。私が入社した当時の『ロイヤルホスト』は24時間営業をしていたので、ミッドナイトにお客さまがドドーッと来店される。しかし、人員が不足していたために客席の一部を閉めて営業していた。それが悔しくてたまらなかった」(生田氏)

 この話題をベースに生田氏が主張したことは「マネジメントは一貫していなければならない」ということだ。「少子高齢化だから人員不足だ」といった言い訳が通ってしまうと、事業は衰退していく。お客も「人手不足なんだから仕方ない」となれば、世の中の価値が下がってしまう。

 このような側面から、DXは「“外食産業の質”を担保するためにはどうすればいいか」ということを考え抜いていく必要があると生田氏は主張する。「マネジメントはこのようなことを意識して、店や社内でのコミュニケーションを密接に行なうべき」と生田氏は語る。

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記事執筆者

千葉 哲幸 / フードサービスジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』編集長、商業界『飲食店経営』編集長を歴任するなど、フードサービス業界記者歴ほぼ40年。業界の歴史を語り、最新の動向を探求する。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年発行)。
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