ファミリーマート、AIアシスタント導入で店長・SVの負荷削減!売上増効果もあると思える理由

湯浅 大輝 (ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
Pocket

双方向のコミュニケーションが可能

 人型AIアシスタントの最大の特長は、そのコミュニケーション能力にあり、2つの機能に大別される。1つ目は、双方向のコミュニケーションが可能なこと。AIが毎日大量のデータを分析することで、販促策や個店の売れ筋商品の販売状況も確認できる。

 たとえば、レイチェルは「売れ筋の『スパムおむすび』の販売が伸長しています。状況の確認をお願いします」といった連絡を、自動的に店長やSVに通知する。さらに、業務のリマインドも可能で、「中華まんセールの販促物の取付は終わりましたか」といった情報も能動的に通知する。中村氏は「業務で埋没しがちなデータや情報を『欲しいタイミングで提供できる』点が強み」だと説明する。

 2つ目は「店長・SVの性格に合わせたコミュニケーションが可能」という点だ。人型AIアシスタントを使う前に、店長とSVは性格診断を受ける。レイチェルはその情報をもとに、コミュニケーションの取り方を変えていく。

 たとえば、競争意欲の強い人に対しては、「地域内の自店の販売順位を表示します」といった通知を届ける。ほかにも、学習意欲が強い店長・SVには「おむすびの詳細データの新着が届いています」と、新しい知識につながる情報を提示する。承認欲求が強い傾向にある人には「いつも使っていただきありがとうございます。これからも頑張っていきましょう」と、労いの言葉を述べるなど、性格に応じたコミュニケーションをとっていくという。

人型AIアシスタント導入で人間にしかできない業務を創出する

 ファミリーマートは、人型AIアシスタント導入により、店長・SVの業務の負担を軽減するとともに、「個店に寄り添った業務」に注力したい考えだ。

 とくに、SVは現在、巡回指導や指導準備といった業務において資料づくりや移動に時間がかかっている。そのため、本来やるべき商圏分析や商圏の変化を捉えた指導に時間を割くことが難しかったという。人型AIアシスタントは担当地域の売上情報や商品発注ポイントなどの資料作成の仕事を代替するため、SVにとっては従来の業務量が約20~30%減る見通しだ。
「(業務量が減った分)商圏分析や、個店に最適な売場づくりの指導など、SVには人にしかできない仕事に注力してもらいたい」(ファミリーマート・中村氏)

 クーガーの石井社長は人型AIアシスタントの今後について、「ゆくゆくは、店長やSVの教育という機能も搭載したい」と意気込む。

 「レイチェルは日々、店長やSVとコミュニケーションを取っているため、その人の性格や業務の熟練度、求めている情報を把握している。それらの属人的なデータをAIに学習させることで、『この業務レベルのこうした性格の人には、こうしたコミュニケーションが効果的だ』というデータベースを構築したい。新人店長やSVに対して、効果的な教育ができるソフトウェアに育つと考えている」(同)

 ファミリーマートは23年3月までに首都圏を中心とした約1000店舗で人型AIアシスタントを導入する予定。23年度末にはそれを全国5000店舗まで広げる考えだ。

1 2

記事執筆者

湯浅 大輝 / ダイヤモンド・チェーンストア 記者

1996年生まれ。シンガポール出身。同志社大学グローバル・コミュニケーション学部卒業後、経済メディアで記者職に就く。フリーライターを経て、2021年12月ダイヤモンド・リテイルメディアに入社。大学在学中に1年間のアメリカ・アリゾナ州立大学への留学を経験。好きな総菜はローストビーフ、趣味は練馬区を散歩すること。

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態