改装店「スーパーバリュー等々力店」の売場づくりから見えた、“ロピア化”の強さと課題

経営コンサルタント事務所 アズライト/代表:榎本博之
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2022年にOICグループ(神奈川県 ※2023年5月1日付で、ロピア・ホールディングスはOICグループに商号変更)傘下に入り、“ロピア流”の売場づくりにより競争力のテコ入れを図るスーパーバリュー。同社は23年7月に東京都世田谷区の「スーパーバリュー等々力店」を改装オープンした。前編では、同店の青果売場を解説した。後編では、鮮魚、精肉、総菜の売場を見ていこう。

スーパーバリュー等々力店の外観

1品単価を上げる仕掛け

 鮮魚は、ロピアの既存店でおなじみの「日本橋魚萬」の屋号を掲げ、売場を展開する。売場はマグロがトップとなっており、名物商品に育っている「ブーメラン」をはじめ、中トロの柵、ぶつ切り、タタキで構成されている。通路を挟んだ平台ではアトランティックサーモンと熊本県産のウナギをジャンボパックで訴求している。

 価格は1000円超えのアイテムが中心で、ボリューム感を出して1品単価のアップを狙った販売方法となっている。とくにウナギでは5000円台のアイテムも揃えるなど、まとめ買いを狙ったアイテム展開も見られた。刺身は5SKUと商品を絞り込む一方で、寿司や海鮮丼は刺身と併せて12尺もの売場スペースを確保し、大々的に展開していた。

鮮魚売場で販売していたあさりごはん(本体価格300円)

 量目では、ファミリー向けの大皿盛から1人向けの小さなポーションまで幅広く展開している。小さなポーションは300円台から用意されており、総菜の補完商品として機能している。丸魚はほとんど展開がなく、生魚も柵が中心である。その中に生シラス(350円)のようなお買い得品から5000円近くするキャビアまで、価格幅の広い商品構成となっていた。売場スペースは青果と同じ程度であまり広くはない。生の魚はロスを極力出さない品揃えとなっており、寿司や海鮮丼で素材を活用できれば、収益性は確保しやすいだろう。

精肉は大容量商品が充実!

 精肉も鮮魚同様、ロピアで展開する「精肉のロピア」の屋号を掲げる。定番コーナーのトップは黒毛和牛の切り落としから、ロピア既存店でも扱う「適霜牛」、輸入牛と続く。売場スペースの制約上からか、品種ごとの縦割り陳列はされておらず、混合するようなかたちで定番の棚割りを行っている。看板商品の「みなもと牛」はステーキ肉、焼肉用に限定し、黒毛和牛と適霜牛と併売するかたちで平台での展開となっている。

 続いて豚肉だが、ブランド肉「東京X」を牛肉と関連でワンランクアップ商品として展開するなど、単価アップを狙った仕掛けが鮮魚同様に見られた。レギュラーアイテムとしては、三元豚やばら肉シールを貼付したアイテムを揃える。鶏肉は自社ブランドの「みなもと鶏」をメインに、上段に「博多地鶏」を組み合わせた構成で、その後にひき肉が続く。

 商品の特徴としては、割安感よりもボリューム感を重視して値頃を訴求する仕掛けが目を引く。牛肉は、価格幅を持たせるため輸入肉を加える構成が見られたが、豚肉や鶏肉は国産品が中心で、質の良さを重視しているように見えた。また、こだわりアイテムとして自社製の加工肉や輸入のナチュラル系加工肉(添加物等が使用されていないスモークのチキンウイング)を平台や定番上部で展開し、特徴ある精肉売場の脇役として機能していた。

 メイン商品の価格は牛肉が1000円前後、豚肉・鶏肉は500~700円台の構成となっていた。ユニットプライスであり、形や大きさが異なっても価格に反映されているため商品化の手間がかからない。少量アイテムはあるものの、中心は下段で展開されているジャンボパックであり、買物客も単身層よりは夫婦やカップル、グループでの買い物が目立っていた。

 総菜は生鮮売場から離れた店角に配置されている。商品構成はロピアの売れ筋であるピザをはじめ、揚げ物やバーガーのジャンボパックがメインとなっていた。弁当・米飯類は確認できず、単身者向けアイテムは鮮魚の寿司や海鮮丼に流れていくかたちであるようだ。

小型店舗でロピアの強みをどう再現するか

 来店頻度を高めるための“アキダイ流”の青果、単身者層のニーズを拾う寿司・海鮮丼コーナーを持つ鮮魚、ロピアの強みである「肉の魅力」を質の面で訴求する精肉、ジャンボパックを中心にボリューム感で挑む総菜というイメージが形成される。

 ただ、大型店の成功パターンをそのままダウンサイジングして、小型店への移行を図るには課題も多い。今回の等々力店においても、コンパクトな売場で「ロピアのダイジェスト版」を実現している点は評価できるものの、品揃え、そして販売面において「まとめ買い」と「来店頻度」のバランスをどのようにとっていくかという観点でみると、課題が残るように感じた。この点においては、アキダイの手法をどう取り入れるかが一つのカギとなりそうだ。

 スーパーバリューは今後、小型店舗の中でロピアの優位性を発揮していくのか。今回の取り組みの検証を進めながら、品揃えや販売手法を進化させていくことを期待したい。

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