商品開発体制も一新!カインズが8つのプロダクトブランドに分けるねらいとは

松岡 瑛理
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部署を超えた
意思決定プロセスを導入

新たなプロダクトブランドを開発するにあたり見直しをかけたのが、商品の開発体制だ。
これまで同社では、個々のバイヤーがカテゴリーや品番別に企画を立案し、事業部長らがその内容を承認する「タテ型」の意思決定プロセスをとってきた。メリットは市場のニーズをとらえ、スピード感のある商品開発・改良を行いやすいこと。他方で、個々人の能力に依存することになるほか、知見や技術が蓄積されにくいなどのデメリットがあった。
そこで新ブランドの開発にあたっては、従来の体制に加えて、新たに「ヨコ型」の意思決定プロセスを導入し部署を超えた横断型のチームで商品開発を行った。今後は、個人の力が発揮されるタテ型の体制と、チームの力が発揮されるヨコ型の体制を並存させながら、どちらの強みも活かす商品開発を行っていくという。

高家正行,土屋裕雅,佐藤オオキ
高家社長(左)、カインズ会長土屋裕雅氏(中央)、nendo代表佐藤オオキ氏(右)

プロダクトブランドの開発には、デザイナーの佐藤オオキ氏を中心とするデザインオフィス「nendo」もかかわった。「nendo」は東京オリンピックの聖火台をはじめとして、建築やグラフィックなど多領域のデザインを手がける。従来カインズでは機能性を重視した商品開発を行っていたが、nendoの製品が機能性とデザイン性の双方を兼ね備えていることに注目した会長・土屋裕雅氏が佐藤氏に声をかけたことが、協業へとつながった。

協業の際にはブランドコンセプトやお客のニーズ、店舗での売り方など、プロセス全体についてカインズ、nendoの双方が意見交換を重ね、具体的な商品の形に落とし込んで行った。

カインズはこれまで、商品企画から販売までを自社が行うことで、適正な品質の商品を、低価格で提供することを強みとしてきた。一方、新たなブランドでは、商品価格は大きく打ち出さない。お客のインサイト(潜在欲求)を着実に反映するため、売上目標も設定していないという。

理由について、高家社長は「『いい商品を安く提供する』という企業理念は変わっていないが、オリジナル商品はもともと、カインズでしか買うことができないもの。他店の商品と比べてではなく、お客にとっての商品価値をもとに値段を決めることを大切にしたい」として、価格訴求に限らず、価値訴求の姿勢を重視する姿勢を強調した。

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