加速するデジタル化の流れ、小売業はどう対処するか?
アドビシステムズ 小売・旅行・CPG業界戦略&マーケティングディレクター
マイケル・クライン

2016/11/08 17:10

 

 アマゾンの「アマゾン・エコー(Amazon Echo)」はその代表的な存在です。キーボード入力の手間がいらず、話しかけるだけで商品を注文することができます。注文した商品は、米国主要都市であれば数時間以内に配達されます。アマゾンだけではなく、グーグル(Google)も同様のデバイス「グーグル・ホーム(Google Home)」を開発中です。

 

「アマゾン・エコー」(写真)をはじめ、対話型コマースは小売業の流れを変える存在になる可能性が高い

 

 こうした「対話型コマース」は、今後1~2年でEC市場の主人公に躍り出る、とまではいかないでしょうが、近い将来、小売業の流れを変えるゲームチェンジャーになるでしょう。

 

 また、ラインや、フェイスブックのメッセンジャーなどといったメッセージ・アプリを「対話型コマース」として利用することも可能です。ただ、メッセージ・アプリの中でもフェイスブックのメッセンジャーの活用方法に関しては、小売業は経験値がまだ少ないのが現状です。これについては旅行業界がとくに先行しており、そこから学ぶ点が多いと私は思っています。

 

 

小売業がデジタル化で直面する5つの課題

──小売業においてもデジタル化が進むなか、小売各社はどのような点に着目し、どう取り組むべきだと考えますか。

 

クライン デジタル化において、小売企業が直面している課題は大きく5つあると考えています。それら課題を解決していく必要があります。

 

 まずは「スピード」です。顧客体験をリアルタイムに提供する機能を持つことが必要です。次に、「複雑さ」です。小売企業は多彩なチャネルを通じて十分なデータを集めています。しかし重要なことは、その豊富なデータからどのような洞察を得るかです。

 

 3つめは「ロイヤルティ」です。顧客に購買の主導権が移り、関心の対象が多様化している今日、企業は顧客獲得のために多額の投資を行っています。いったん獲得した顧客はつなぎ留めなければなりません。つまり、顧客ロイヤルティをどう高めるかということも課題です。

 

 4つめに「RO(I 投下資本利益率)」です。マーケティング予算を使っただけの効果を得られているか。的確な予算配分がされているか。レスポンス率(プロモーションの反応率)は低下していないか。これらを確認し見極めることが重要です。

 

 そして最後に、5つの中で最も重要なのが、「パーソナライゼーション」です。各顧客の特性に合わせ、リアルタイムに相互のやり取りを交わすことは、われわれが向かうべき方向であり目標です。その達成に必要なのがデータとコンテンツです。

 

──最も重要であるパーソナライゼーションを実現するためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。

 

クライン まず、データからお話しすると、デジタルの分野で成功している小売企業の共通点は、デジタル機能とデジタルマーケティングの企画・研究を行う「センターオブエクセレンス(戦略立案・実行を推進する中核的専門組織)」を設けていること、そしてデータの基盤を確立していることです。

 

 その好例が、当社の顧客でもある米国HC大手のホーム・デポ(Home Depot)です。彼らは細かいデータをもとに、たとえば家庭用の商品を買いに来る顧客と、業務用の商品を買いに来る顧客の購買動向の違いを理解することができます。

 

 一方、コンテンツについては、データ分析を行ううえで、コンテンツの利用者が複数のセグメントに細かく分類されるようになってきました。当社はそのためのソリューション「アドビ オーディエンス マネジャー(Adobe Audience Manager)」を提供しており、ホーム・デポでも利用されています。17年半ばには中小企業向けのソリューションの発売も予定しています。

 

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