テスコ、オカド、カルフール、メルカドーナ… 欧州主要7か国12社の戦略徹底解説

フリーランスライター 松岡由希子
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各国でネットスーパー・DXの取り組みが加速!

欧州の食品小売市場は、各地域に数多くのスーパーマーケット(SM)が存在する日本と異なり、少数の大手企業によって寡占化されてきた。しかし、近年ではドイツを中心にハードディスカウンター(HDS)が台頭しているほか、オカド(OcadoGroup)のようなネットスーパー専業のEC企業も存在感を増している。また、IT企業や大学などと協業してAIやロボットなど最先端技術の導入を進め、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいる企業も少なくない。本稿では、欧州主要小売企業の19年度の業績と近年の動向を国別に整理して解説する。
※本稿における各企業の業績は、公表されている決算資料の19年度の数値を使用

イギリス

最大手テスコは海外事業を整理

 英国SM最大手テスコ(Tesco)の2019年度の営業収益は565億ポンド(約7兆6300億円:対前期比0.7%減)だった。売上高の80%以上を占める英国・アイルランドでは前期からほぼ横ばいで推移したものの、ポーランド・チェコ・ハンガリー・スロバキアの中欧4カ国で売上が同10.1%減と伸び悩んだ。

 テスコは、このところ相次いで海外事業を整理している。20年3月、タイ事業とマレーシア事業をチャロン・ポカパン・グループ(Charoen Pokphand Group:本拠地タイ)に106億ドル(約1兆1400億円)で売却したのに続き、6月にはポーランド事業の大半をデンマークの小売企業サリング・グループ(Salling Group)に売却すると発表した。

 海外事業を売却する一方で、テスコはネットスーパーへの取り組みを強化している。イングランド中部ウェスト・ブロムウィッチの大型店「エクストラ(extra)」で初の都市型フルフィルメントセンターの建設を進め、今後3年間で同様の物流施設を25カ所以上開設する計画だ。20年3月以降は、新型コロナウイルス感染拡大に伴って急増するネットスーパーの需要に対応し、受注キャパシティを週当たり100万件規模に増強。19年度には9%程度だったネットスーパーの売上高構成比は20年第1四半期時点で16%を超えている。

 テスコに次ぐ大手SM企業のセインズベリー(Sainsbury’s)の19年度の営業収益は323億ポンド(約4兆3600億円:同0.1%減)で、前期から横ばいで推移している。同社は18年4月以降、米国のウォルマート(Walmart)傘下のアズダ(Asda)との経営統合を進めてきたが、19年4月に英競争・市場庁(CMA)がこれを阻止すると発表したことを受けて断念した。

スパートフォンを活用したセインズベリーのセルフレジ「スマートストア」
スマートフォンを活用したセインズベリーのセルフレジ「スマートショップ」

 セインズベリーでは、ネットスーパーの売上が同7.6%増と伸びている。20年3月以降は、受注キャパシティを約1.5倍に増やし、週当たり60万件の受注に対応している。

 そのほか、店舗でのデジタル化も推進。来店客がスマートフォンアプリを使って購入する商品のバーコードを読み込み、専用機にQRコードをかざして退店するセルフレジ「スマートショップ(SmartShop)」をSMの全店舗に導入した。19年末時点で18%だった利用率は、新型コロナウイルス感染拡大以降、30%以上に上昇している。

 ネットスーパー専業企業のオカドは、

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