セブン&アイ22年度決算&戦略分析! 売上高11兆円超も株主対応に懸念、突破口は?

DCS編集部決算分析班
棚橋慶次
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セブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長:セブン&アイ)が4月6日に公表した2023年2月期連結決算は、営業収益が対前期比 35.0%増(前期から3兆615億円増)の11兆8113億円、営業利益が同30.7%増(同1188億円増)の5065億円、経常利益が同32.7%増(同882億円増)の4758億円だった。

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営業収益は11兆円の大台に!

 営業収益は国内小売としては初となる11兆円台、営業利益も5000億円にのせるなど大幅な増収増益を達成、いずれも過去最高を更新した。国内小売の双璧をなすイオン(千葉県)の通期決算は来週の発表だが、業績予想どおりの数字であるならば、売上高は2兆円以上の差がつくことになる。

 一見、順風満帆に見えるセブン&アイの業績だが、収益性や資本効率面では課題も残す。投資家が重視するROE(株主資本利益率)は8.7%と、グローバル水準では当たり前とされる10%に届いていない(セブン&アイは目標を上方修正し、25年度にROE11.5%<当初10%>以上を目標に掲げている)。

 セブン&アイの課題は何か。セグメント別に業績を精査すると、同グループの現状と課題が見えてくる。セブン&アイグループの事業セグメントは、「国内コンビニストア」「海外コンビニエンスストア」「スーパーストア」「百貨店・専門店」「金融関連」「その他」にわかれる。ここでは主要セグメントの営業利益の増減率、全体の業績への寄与度、営業利益率を検証してみたい。

 まず、国内コンビニ事業から。同セグメントの営業収益は8902憶円、営業利益は2320億円で、営業収益営業利益率は26.0%と群を抜いて高い。ただ、営業利益の伸び率は3.9%と伸びは鈍化しており、安定成長に移行している。営業収益の全体への寄与度は7.5%に過ぎないが、営業利益の寄与度は45.8%に達する。言うまでもなくフランチャイズチェーンビジネスであるため、見た目の売上高が小さい一方で利益額が大きいため利益率が高い(参考:チェーン全店売上高ベースの営業利益率は4.5%)。

 続いて海外コンビニ事業の営業収益は8兆8461憶円、営業利益は2897億円だった。営業収益の伸び率は対前期比70.3%増、営業利益も同81.2%増といずれも高い伸びを示している。営業収益営業利益率は3.2%と、国内コンビニと比べると見劣りする。全体業績への寄与度は営業収益が74.8%に達しており、営業利益は営業収益よりも若干落ちるがそれでも57.1%を占める(注:営業利益は連結消去分も構成比に入れておりその構成が-13.3%あるため、国内外コンビニ事業を合算するだけで100%を超える)

 なお海外コンビニ事業の営業収益、営業利益の伸び率の高さは円安に大きくふれた為替要因も影響しているのだが、ドルベースで見てもセブン-イレブン・インクのチェーン全店売上高の増収率は対前期比34.9%増、営業利益は47.3%増と非常に高いことを付加しておきたい(セブン-イレブン・インクの決算は22年12月期)。

 次にスーパーストア事業の営業収益は1兆4491憶円、営業利益は121億円で、営業利益率は0.8%と主要3事業の中で最も低い。営業収益も前期から20.0%減少と大きく落ち込んでいる。全体への寄与度は営業収益が12.3%、営業利益が2.4%といずれも存在感が薄い。

 まとめると、セブン&アイグループの収益基盤は、国内コンビニ事業に収益を依存していたかたちから、海外コンビニ事業のスケールアップにより売上・利益を大きく増やし、柱を国内外コンビニ事業へと2本化にすることに成功。そしてこの国内外コンビニ事業がほとんど全ての利益を稼ぎ出している構造だ。加えて国内コンビニ事業は成長に頭打ち傾向が見られる一方で、海外コンビニ事業についてはさらなる成長が期待できるし、短期的にもオリジナル商品の強化による粗利益率改善を進めることを明らかにしている。

 一方その他の国内事業に目を向けると、国内コンビニ事業と不可分の関係にあり収益性も高い金融関連事業はさておき、それ以外の事業の存在感は薄れている。これまでは売上高の寄与度は高かったスーパーストア事業だが、海外コンビニ事業の急拡大でその比率が1割強にまで小さくなったからである。

 つまり、それ以外の事業の存在感は薄れ、傍目からはその他事業の必要性が問われてもおかしくない状況にあると言えそうだ。

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