コロナが小売業の上位寡占化を加速 これからも大型再編不可避の理由とは?

小野 貴之 (ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長)
Pocket

M&A相次いだ2020年 さらなる再編はあるか

 コロナ禍は長期化の様相を呈しており、足元では感染拡大の第4波といっていい状況となっている。GMSやCVSなど低迷中の業態は、いまだ抜本的な業績改善策を示せずにおり、特需に沸いたS MやDgS、ホームセンター(HC)も次年度からは反動減が懸念される。そうしたなかで浮上してくるのが、さらなる再編の可能性だ。

 実際に、コロナ禍に見舞われた20年から21年にかけて、流通業界では数々のM&A(合併・買収)、事業再編が見られた。

 国内CVS事業が苦戦したセブン&アイは、20年8月に米子会社を通じて、石油精製会社マラソン・ペトロリアム(MarathonPetroleum)が運営するガソリンスタンド併設型CVS「スピードウェイ(Speedway)」を買収することを発表した。買収額は2兆円にもおよび、多くの業界関係者の注目を集めた。一方ローソンは、現在約3300店舗を展開する中国事業をさらに拡大すべく、21年度以降、出店を加速させる計画を発表している。

 国内CVS市場は3チェーンでシェアの9割超を占める“超”寡占化市場。国内マーケットが飽和に向かうなかで、海外に成長の場を求めたとみられる。

 SMでは、イオンとセブン&アイがSM事業の再編を完了させた。マーケットシェアの数値に表れるのは次年度となる見通しだが、この再編により上位集中が進むのは間違いなさそうだ。また、北海道および北東北で店舗展開するアークス(北海道)もローカルチェーンの買収に動いており、19年9月の伊藤チェーン(宮城県)買収に続いて、21年4月に栃木地盤のローカルSMであるオータニを完全子会社化。着実にシェアを高めている。

 HC業界でも大型M&Aが見られ、ニトリホールディングス(東京都:以下、ニトリHD)がDCMホールディングス(東京都)との争奪戦を制するかたちで、21年1月に島忠(埼玉県)を子会社化。20年11月にはアークランドサカモト(新潟県)はLIXILビバ(埼玉県:現社名ビバホーム)を完全子会社化している。

 DgSでは、かねて協議されてきたマツモトキヨシホールディングス(千葉県)とココカラファイン(神奈川県)の経営統合がついに成就し、21年10月に新会社マツキヨココカラ&カンパニーが誕生する。これによりDgS業界では1兆円規模の企業が3社並び立つことになる。熾烈なシェア争いの中ではさらなるM&Aという選択肢も十分にありえる。

マツモトキヨシホールディングスとココカラファインの経営統合会見
マツモトキヨシホールディングスとココカラファインの経営統合がついに成就し、21年10月に新会社マツキヨココカラ&カンパニーが誕生する

1 2 3 4

記事執筆者

小野 貴之 / ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長

静岡県榛原郡吉田町出身。インターネット広告の営業、建設・土木系の業界紙記者などを経て、2016年1月にダイヤモンド・リテイルメディア(旧ダイヤモンド・フリードマン社)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属し、小売企業全般を取材。とくに興味がある分野は、EC、ネットスーパー、M&A、決算分析、ペイメント、SDGsなど。趣味は飲酒とSF小説、カメラ

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態