ユニー高収益化に一定のメド!? PPIH(旧ドンキHD)社長交代を読み解く
次期中期計画は2020年2月に発表
増収増益のドライバーはユニーとのシナジー創出

それでは次の経営計画はどうなるのか。吉田新体制のもとで案が固められ、2020年2月に公表されるとのことだが、その骨子は売上高2兆円、営業利益1000億円達成を目指すとされている。ビジョン2020の事業規模の2倍を目指すことになる。
新中期計画の詳細は半年待たねばならないが、その骨子はすでに開示されている。その鍵はユニーの統合成果の最大化にある。
ユニーが通期連結になる2020年6月期会社予想(売上高1兆6500億円、営業利益660億円)と新中期計画とを比較してみると、売上高で3500億円の上乗せ、営業利益で340億円の上乗せが必要になる。ここで、ユニーとUDリテールの事業計画を紐解くと、ユニー店舗176店(アピタ87店、ピアゴ89店)のうち100店を2022年までに業態転換し、営業利益を200億円上積みする算段である。ちなみにこれまで業態転換した16店では、従来の食品中心の売上構成にドン・キホーテが従来から得意とする非食品(衣料、日用雑貨、家電、スポーツ・レジャーなど)のカテゴリーが上乗せされ、転換前と比べて直営部門の売上高が1.7倍から2.2倍程度増えていると報告されている。正確な数値は開示されていないが、これで増収増益の最大部分は説明できると筆者は試算するがいかがであろうか。
1000億円の営業利益を達成するには、旧ドン・キホーテ側の既存店底上げ、出店、MDの進化・深化、当社独自のデジタル体験創出などが不可欠であることは言うまでもないが、それは当然のこと。やはりユニーとの統合効果の発現が最重要になると思われる。新中期計画は大型M&A(合併・買収)まずありきの数値だとは筆者には見えない。既に業態転換した店舗で予習済みの内容を100店規模で展開することが最大のミッションであれば、営業畑ではないトップ就任も不自然ではないと考えられる。
次の本当の伏線は大原氏の動向
実は筆者は上記の新中期計画の肉付け以上に、社長退任予定の大原氏の今後に注目している。同氏は今後、創業会長特任顧問兼特別理事 PPRM(USA)代表取締役社長という新しい役職を担うことになる。PPRM(USA)は、Pan Pacific Retail Mangement (USA) Co.の略称だ。
大原氏は今回の決算発表の席上で「最重要任務である米国市場の本格開拓」を掲げた。好景気ながらアマゾンの台頭やショッピングモールの衰退で居抜き案件が増えており、かつTokyo Centralというグローサラント業態(日本食のグローサリーとイートインを独特のエンターテイメント感と共に提供する業態と筆者は解釈している)に手応えを感じているのであろう。当社の別の資料によればまずは米国内100店舗の構想を持っているようである。
居抜き物件に勝てるフォーマットで積極出店するというのは、当社のお家芸だと筆者は考えている。当社は、個店主義・権限移譲・独自MD・成果主義といったチェーンストア理論とは一線を画す事業モデルを長崎屋買収後に同店舗に適用しGMS業界を勝ち残った。この経緯と今回の米国シフトは筆者には二重写しに見えてならない。あとは米国で勝ち残るユニークな業態をしっかり確立できるのか。半年後の新中期計画発表で、もう少しヒントが示されることを希望したい。
英語版「源流」完成から伺える本気度
なお、今回の決算発表では当社の経営バイブルである「源流」の英語版が完成したことも報じられた。海外展開、とりわけ米国展開への本気度をうかがわせる内容である。
大原氏は表舞台から引くと表明したが、いずれ米国事業に道筋をつけて今一度表舞台に再登場する日がいつかくると考える。その時は創業者である安田氏も東南アジア展開の青写真を掲げて再登場するのではないか。筆者はそんな日が訪れることを楽しみに待ちたい
プロフィール
椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、
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