焦点:自動車・農産物で溝深い日米通商交渉、来週の首脳会談がヤマ場

ロイター
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4月17日、16日に終了した初の日米通商交渉は、日米間の溝が大きく、来週の次回交渉に実質的な進展を先送りした。ただ、短期間のインターバルで再交渉に臨んでも、合意が見えてくるのかは不透明。来週後半の日米首脳会談での決断に委ねられたもようだ。写真はニューヨークで2016年11月撮影(2019年 ロイター/Andrew Kelly)

[東京 17日 ロイター] – 16日に終了した初の日米通商交渉は、日米間の溝が大きく、来週の次回交渉に実質的な進展を先送りした。ただ、短期間のインターバルで再交渉に臨んでも、合意が見えてくるのかは不透明。来週後半の日米首脳会談での決断に委ねられたもようだ。

とはいえ、両国間の主張のかい離が、事務的な積み上げなしに首脳同士の話し合いで埋まるのか。市場に漂う楽観論とは裏腹に、首脳会談における通商分野の議論は予断を許さない。

ある政府関係者は、今回の交渉について「日米が双方の主張を聞き、そのまま終了した格好だ」と話す。議論は実質的に来週の日米首脳会談に先送りされたと言える。

ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表との会談を終え、16日にワシントンで会見した茂木敏充経済再生担当相も「個別の項目については、現時点で合意していない」と述べた。

先の政府関係者によると、今回の交渉の目的は、1)大枠の交渉範囲と交渉手順、2)農産物や自動車など個別分野における米国の具体的な要求と日本側の回答をすりあわせ、今後の交渉スケジュールのメドを模索することだった。

しかし、最初の交渉範囲に関しては、物品交渉とサービス交渉の2段階を志向する日本と物品をスタート地点にするものの、サービスを含めた一括交渉を目指す米国とのギャップは、全く埋めることができなかったという。

また、農産物と自動車など個別分野でも、双方の主張の隔たりは大きく、2回目の交渉で決着する可能性はかなり低く、合意時期と合意内容ともに来週の日米首脳会談での議論に委ねられたという。

安全保障上の理由で自動車輸入に高関税を課すことができる米通商拡大法232条の適用について、トランプ大統領が判断する期限が5月18日に迫ってきている。

今回の交渉で茂木担当相は、日米が交渉中に米国が高関税を課さない(232条を発動しない)ということについて確認を取ったと会見で述べた。

ただ、複数の日本政府関係者によると、米国は高関税の発動を放棄したわけではなく、あくまで交渉中は課税しないと言っているだけだという。

また、高関税の発動を見送る代わりに、輸出数量の制限を新設したり、政府間の数量規制ではなく国内メーカーの自主規制の形で実質的に対米輸出を削減する方法など、いくつもの「代替案」が考えられ、日本にとって相当に厳しい交渉になりそうだとみられている。

実際、USTRも16日、「2018年で676億ドル(約7兆5700億円)という非常に大規模な対日貿易赤字に対する懸念を表明した」との声明を発表。対日貿易赤字の過半は自動車が原因のため、「自動車問題がネックとの暗黙のメッセージを米国が発した」(与党関係者)との警戒感が、早くも政府・与党内に広がっている。

一方、農産物を巡っても、日本は難問を抱えている。茂木担当相は16日の会見で、米国が環太平洋連携協定(TPP)から離脱し、農産物の対日輸出でオーストラリアやカナダと比べ、関税面で劣後している現状を改めたいとの意向を示したと述べた。

複数の日米交渉筋は、日本の農産品関税を発効済みのTPP並みの水準に引き下げることは可能だが、「米国の農産品輸出増加による対日貿易赤字の削減額は、数千億円単位程度にとどまりそうだ。それでトランプ大統領がどう反応するか読めない」と先行きの不透明さを指摘している。

政府内には、安倍晋三首相とトランプ大統領の親密さは世界的にも群を抜いており、首脳会談で日本に有利に決着する可能性があると期待する見方がある。

しかし、安倍首相と同じように選挙を控えるトランプ大統領が安倍首相にどこまで配慮するのか、対米外交に通じている政府関係者の間でも「読めない」という声が漏れる。かつてない真剣勝負の日米首脳会談になる可能性が高まっている。

(竹本能文 編集:田巻一彦)

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