複雑化する小売業の経営課題、今後10年で大きく変わる7つの論点とは

ローランド・ベルガー パートナー:松本渉
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知恵の輪のように複雑化する経営課題

 今回からスタートする本連載「小売の未来学2034」は、小売ビジネスに深い知見を有する欧州系戦略コンサルティングファームであるローランド・ベルガーが行った、グローバル小売企業や周辺企業への調査や支援実績に基づいた内容である。そのうえで、今後10年間で大きく変化していくであろう日本の小売業界の将来像について論じていくというのが趣旨である。

 第1回は、日本の小売業界の将来像を読み解くうえで重要なキーワードとなる「ステークホルダーマネジメント」について解説していきたい。

 小売企業は、消費者・地域社会・メーカー・サービス業者といったステークホルダーの“ハブ”になって、彼らのニーズを仲介しながら事業を推進するというのが基本的なビジネスモデルだ。また、コンビニエンスストアなどの業態ではフランチャイズオーナーに運営を委託し、オーナーが地域社会とつながって人材を雇用し店舗運営を行うケースもある。この場合は二重三重にステークホルダーが存在し、ニーズ調整の複雑性が高まる。

買い物 イメージ
小売企業は、消費者・地域社会・メーカー・サービス業者といったステークホルダーの“ハブ”になって、彼らのニーズを仲介しながら事業を推進するというのが基本的なビジネスモデルだ(写真はイメージ i-stock/Minerva Studio)

 しかし近年、こうしたステークホルダーマネジメントに“歪み”が生じている。都市部と地方の格差拡大による画一的業態展開の限界、労働人口の減少による出店制約や既存店の運営困難化、原材料単価の継続的上昇による仕入れ業者の破綻とサプライチェーンの脆弱化、仕入れ業者も含めたサプライチェーン全体でのフードロスの削減要請など、ステークホルダーから迫られる課題は山積みだ。

 そしてこれらの課題は相互に絡み合っていて単独では解決できず、「知恵の輪」のように複雑に絡まっているため、こちらを立てればあちらが立たず、どこから手を付けてよいかわかりにくい。結果として具体的なアクションが遅れがちだ。

年々減少する「マス」の消費者

 従来、小売企業はこれらのステークホルダーのニーズを巧みに調整してきたが、なぜ近年になって急速に困難に直面しているのか。実はその“震源地”は

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