ZOZOに勝つ!日本のアパレルが「シーイン」になる唯一の手法とは
いまからZOZOに勝つデータベースを作ることは不可能
また、そのブランドの服しか買わないという顧客の割合である「服の顧客率」は、10代から40代まであまねく20%もない。ほとんどの人がある程度の幅をもって、複数のブランドをホッピングしている。「うちの顧客とZOZOの客は違う」などという人たちはどういう調査をしているのか。
いずれにせよ、ユニクロ快進撃、外資SPAの躍進、Z世代の中国・韓国アパレルの抱え込みに、外的要因としてSDGsによる「買い控え」が加わり、確実にアパレルマーケットはシュリンクしている。今、調子が良いのは過去例をみないほどの円安がつづき、「観光立国」をうたった岸田政権のインバウンド誘致とコロナの反動、いわゆるリベンジ消費のおかげだろう。大事なことは、PDCAというのは、負けているときだけにやるのでなく勝ったときこそ正しい投資を行い、「買った理由」を分析することが大事なのだが、日本企業は概して負けたときに慌てて、PDCAだと会議や承認を増やす。
こうして、今年の猛暑が再び襲ってくる夏あたり、日本のアパレルは在庫の読み違いによる大ダメージを受け、中国・韓国などアジア・アパレルの日本への本格参入が始まるというのが私の「読み」だ。この「デジタル x AI時代」には、SPAは負けるモデルなのである。デジタル x AIの時代は「無在庫マッチングモデル」(シーインのビジネスモデル)が勝利のモデルなのだ。
さて、こうして売上が下がった状況で無理に売上を取ろうとするとどんなことが起こるか。私が再三「循環経済下では、売上・利益の大きさは企業の強さを表すわけではない」といっているにも関わらず、下調べも準備もしていない状況の中で、唯一絶対的に売上が上がるのは「ZOZOTOWNへの出店」ということになる。そして、日本人の10人に1人がアクティブ会員だという事実にもかかわらず、御用コンサルに「顧客が違う」など、意味不明なロジックをつくらせ、自分の顧客を差し出す(ZOZOTOWNへ出店する)わけだ。
私は通販企業で取締役やコンサルを6年やっているから、一旦自社サーバに顧客情報を入れたら、通販企業は全精力を集中し、その顧客を絶対に逃さない。アップセル、クロスセルで売上を上げるなど、あの手、この手でLTV (顧客生涯価値)を長期化させてゆく。いまだに、日本のアパレルの事業KPIは、商品ベース(商品回転率、商品粗利、交差比率など)で顧客ベース(CPA/LTVなど)ではない。ボケッと商品ベースのKPIを追いかけている間に、顧客ベースの管理会計を導入している競合にしてやられるのである。
それでは、我々はZOZOを無視できるのかという疑問にたどり着くが、残念ながら、時既に遅しである。よほど差別化できる戦略を実践できなければ、売上面で大きなダメージを受けることになる。なにぜ、日本人の10人に1人だ。よく考えていただきたい。ZOZOは在庫リスクも持っていない。在庫リスクはテナント側が持つ。また、AIをつかったクロスセルや、よりコスパのよい類似商品へのリプレイスもZOZOがイニシアティブを持っている一方、値下げやポイントはテナント側の負担になる。ZOZOにとってよいことばかりなのである。このように、「優良顧客」をしっかり抱え込んでいる企業は、売上がある臨界点を超えたら勝ちサイクルに入ってゆき、誰も止められなくなる。テナント側はほとんど使えないマーケティングデータが見えるだけで、ZOZO店舗内での自由度もほとんどない。
それならば、このZOZOモデルを他のアパレルがやればよいではないかと素人はいうだろう。しかし、日本人に10人に1人というアクティブユーザを抱えるZOZOに勝つデータベースを今からつくるのは不可能だ。
では、どうすればよいのか? そこで出てくるのが「シーイン・モデル」だ
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