ユニクロに負けずに利益を上げる!アパレル2024年「5つの論点」解決策とは
キーはTOKYO GIRLS MARKETにある
以上も踏まえるかたちで論点2の回答に移りたい。
さて、某業界専門誌がとってつけたように韓国企業の取材をしているが、その分析の甘さは情けなくなるほどだった。「K-ファッションとKポップの融合」ともっともらしいことを書いてはいるものの、具体的に融合してどんなビジネスモデルなのかは全く書かれていない。Tokyo girls marketとは、私の過去の論考に詳しくかいてあるので読んでいただきたいのだが、Dholicと東京ガールズコレクションがコラボレーションして開設した、いわゆる「インフルエンサー・プラットフォーム」といえる試みである。
日本の女子達がファッションサーチのために使っているのがInstagramでその存在は圧倒的だ。だが、「推し女子」を見つけたはいいものの、タグ付けしたその人のライフスタイル全般を見ることができないのが、インスタの最大の欠点である。それを可能にしたのが22年1月より本格的にスタートしたECサービス「TOKYO GIRLS MARKET」である。「TOKYO GIRLS MARKET」は、推し女子を軸に、その人が着ている服や雑貨を逆サーチできる。ちょっとしたことだが、インスタを使っている人からするとこれは非常に便利なツールだ。これが、K-ポップとK-ファッションの融合である。
ここまで分析できれば、ECの弱点であるAcquisition (個客の獲得)の強化ができる。あとは、Tokyo girls marketのコンテンツの問題次第だからだ。韓国企業であれば、ここにKポップを載せてくるだろう。だから、日本はそれぞれのブランドが手を組み、 「Tokyo contemporary fashion」を載せてみてはどうか、というのが私の提言である。
Tokyo contemporary fashionというのは、私がかねてから提案している「Tokyo」をブランド化するという試みだ。近代的でモード、ミニマルで細かく丁寧なディテール。Tokyo が醸し出すブランドのイメージはいくらでもある。もはや日本で服を売っても売れないのだから、もっと高額な高級品をだすか、さらにアニメやゲームの主人公などをコラージュした低価格商品を逆D2Cで日本に投入するのもおもしろい。
成功するOMOの戦略組織とは?
ここからは3つ目の論点、「OMO戦略を効率よく動かす組織設計は何か」を解説したい。
ある著名コンサルタントと話をしたときだった。「河合さん、ECは市場がどんどんのびていて、毎年ZOZOTOWNのような企業が生まれている。攻めるべきマーケットはここだ」と云っていたのだが、残念ながらそれは、全くの誤解である。
町に出て世の中を見ないから、ECが伸びて新しい市場ができているように見えるのだ。
服を買っている人は減っているし、売れているのはやはりリアル店舗で売れているアパレル品だ。別に、EC専門の服の市場が拡大しているわけではない。「買い方が多様化している」にすぎない。だから、市場全体でみれば、やはりアパレル市場は毎年縮小していて、相対的にECへの移行が加速しているから、ECが伸びているように見えるだけなのだ。
しかし、ECといってもスマホをもって消費者が町を徘徊している今、「EC イン・ザ・ポケット」、つまり、ECは決済手段になってゆくだろう。例えば、Appleストアをみてもらいたい。レジというものが存在せず、Appleの従業員がそれぞれ端末を持ちAppleストアの中を歩き、接客をしながらカード決済を行って、その場で領収書もe-mailでおくることができる。
私は、NEW STORE(https://www.newstore.com/) というオーストラリアのOMOツールを販売している企業cの仕事を手伝ったことがあるのだがこれが、まさにAppleストアの中でおきているOMO戦略の中核をなすソリューションである。おそらく、日本では私の会社が最もしっかりと実装支援ができるため、興味があるかたはぜひご連絡いただきたい。このソリューションは決済ソリューションを組みあわせることで、ECを決済に集約し、また、在庫移転を店舗別にできるツールだ。欧州で爆発的に導入企業が増えており、やがて日本でも広がるのは時間の問題だ。以上が、論点3の私の回答だ。
河合拓のアパレル改造論2024 の新着記事
-
2024/11/26
イタリア繊維産業に学ぶ、高くても売れるビジネスの秘密とは 染めと売り方が段違い -
2024/11/19
ユニクロ、開始から7年で明らかになった有明プロジェクトのいまとすごい成果 -
2024/11/12
アパレルは「個人売買」「古着」が、今後驚くほど拡大する理由 -
2024/11/05
ユニクロがZOZOに出店しない当然の理由と今後のECモールとの付き合い方 -
2024/10/29
ライザップ傘下の夢展望、Temu効果で株価高騰も拭えない「不安」とは -
2024/10/22
事業再生、「自ら課題解決する」現場に変えるための“生々しい”ノウハウとは
この連載の一覧はこちら [48記事]
ファーストリテイリング(ユニクロ),しまむらの記事ランキング
- 2024-11-13値上げしたのにアパレル業界が利益に結び付かない2つの理由
- 2024-11-07同じ低価格なのに…GUがしまむらやワークマンと「競合」しない決定的な理由_過去反響シリーズ
- 2023-08-28ユニクロと東レとのサステナブルな関係から生まれたリサイクルダウン
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2022-05-03ユニクロ独走の秘密は販管費にあるのに、原価削減を繰り返すアパレルの実態とは
- 2024-09-27ユニクロが中間価格帯になったことに気づかない茹でガエル産業アパレルの悲劇_過去反響シリーズ
- 2022-04-15鈴木誠社長が語る、しまむらがコロナ禍でも業績好調の理由とは
- 2022-01-11ZARAとユニクロだけがなぜ余剰在庫を撲滅できるのか?本人達も気づいていないメカニズムとは
関連記事ランキング
- 2024-10-29ライザップ傘下の夢展望、Temu効果で株価高騰も拭えない「不安」とは
- 2024-11-05ユニクロがZOZOに出店しない当然の理由と今後のECモールとの付き合い方
- 2024-11-19ユニクロ、開始から7年で明らかになった有明プロジェクトのいまとすごい成果
- 2024-11-12アパレルは「個人売買」「古着」が、今後驚くほど拡大する理由
- 2024-11-13値上げしたのにアパレル業界が利益に結び付かない2つの理由
- 2024-11-07同じ低価格なのに…GUがしまむらやワークマンと「競合」しない決定的な理由_過去反響シリーズ
- 2024-09-17ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
- 2021-11-23ついに最終章!ユニクロのプレミアムブランド「+J」とは結局何だったのか?
- 2024-10-22事業再生、「自ら課題解決する」現場に変えるための“生々しい”ノウハウとは
- 2023-08-28ユニクロと東レとのサステナブルな関係から生まれたリサイクルダウン
関連キーワードの記事を探す
ファストリが3兆円突破!24年8月期決算で語られた今後の成長戦略
イタリア繊維産業に学ぶ、高くても売れるビジネスの秘密とは 染めと売り方が段違い
ファストリが3兆円突破!24年8月期決算で語られた今後の成長戦略
「亜熱帯化」でも売上を伸ばすユニクロ、伸び悩むアパレルとの違いとは
ユニクロが中間価格帯になったことに気づかない茹でガエル産業アパレルの悲劇_過去反響シリーズ