ユニクロに負けずに利益を上げる!アパレル2024年「5つの論点」解決策とは
「シーイン型ビジネス」は世界ではいまや常識
日本は周回遅れ

上記の、論点1.2はともに、中国、韓国のD2Cビジネスモデルに対する競争戦略となる。
韓国アパレルの経営者と話をして驚いたのは、「日本のビジネスのガラパゴス化」だ。
日本のサプライチェーンは、アジアの縫製工場から商社が商品を買い取り、商社が海上、あるいは空路で日本に商品を運び、アパレルの倉庫に入れる。アパレルは、そこで仕分けを行って各店配送をして販売する。
これに対して、例えば、日本にある大手韓国アパレルは、ECで受注したら、東大門にある工場へ指示をだす。東大門の工場は「個配」で、商品をクーリエ便で最終顧客にダイレクトに届ける。当然、小口なので輸入税の多くは無税となり、また(小売、アパレルの)在庫はゼロだ。さらに、流通コストも商社などが入らないために中間マージンもゼロになるし、そもそも仕入・売上は帳合い(同時に仕入と売上を計上すること)のため、在庫評価損や評価減もゼロとなる。
勘のよい方はお気づきかと思うが、まさにシーインのビジネスモデルと同じで、これを日本市場に向けて再構築したものだ。私はこのモデルを日本の尾州でやればよいと発破をかけていたが、すでにこれが世界の常識であり、私自身も周回遅れであったと認めたい。そして日本の企業は周回遅れどころかデタラメで、そもそもD2Cなどとよべる状況ではない。これが、8割失敗の和製D2Cの真相である。
私が「先進的なD2Cモデルですね」とその韓国企業に言うと、はてな?という顔をし「日本では違うのか?」と逆に聞かれたものだ。
中韓から学ぶ気のない、ガチガチになった日本の古い頭からは生まれないどころか理解されない発想なのかもしれない。いずれにせよ、過去の「DCブーム」時代に儲かって仕方なかった日本仕様の、世界で日本だけがやっている高コストサプライチェーンに今も頼っているのが日本企業の現状なのである。韓国企業はk-ポップとk-ファッションをつなげ、「真のD2C」で、圧倒的な低コストでZ世代を掴んでいる。その結果、10代、20代の女子達のファッションのお手本の80%は韓国、ということになっているわけだ。
いま、コロナ明けの反動と円安・インバウンド効果で多くのアパレル、百貨店も潤っているが、5年後はそうはいかない。ネクスト・コロナではフェアな戦いが繰り広げられ、中国・韓国企業によるM&Aが日本で起こる可能性もある。そして、商社などの中間流通を排除したD2Cが、次世代のZ世代、α世代を根こそぎ取り込んでゆく可能性が高い。もはや「これは日本製だから品質が違う」などといえないのである。今、衣料品の99%は中国、東南アジアなど海外で製造されている。商品力からいえば論理的にイーブンだ。流通構造がシンプルな分だけ、中・韓企業のほうが有利である。
この脅威に打ち勝つ方法はただ一つ。日本のアパレルも同じビジネスモデルに転換すればよいのである。まずは日本の産地、中国の北・南、東南アジアなどの工場からのダイレクト配送だ。実際、韓国企業が東大門でやっているのだからできないはずはない。東大門といえばギャルブランドの聖地で、とことん日本向けの製造をやっているため、いまや日本製よりよほどよい。
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