衝撃!SPA業態そのものには優位性がない、本質的な理由とは

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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SPAの本質は工場を持つことではなく
「製造機能」を持つこと

Bim/istock
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 2000年、私は経営コンサルタントになり、アパレルの専門家という建付けで、たくさんの提案書やプロジェクトにアサインされた。

 コンサルティング会社には、「流通・小売」業セクターというラインがあり、私はそこに配属されたのだが、驚かされることがあった。

 比較的多くの小売業者が「生産機能を持ちたい」という意向を持っていたからである。私の現場感覚でいえば、百貨店などの「小売」に商品を卸していた製造業業態が、自社店舗を持ちたい、という感覚が世の中の流れだったからで、小売が生産機能を持つことはまだ一般的ではなかったからである。

 「コンサルティング会社の中には、5年後の情報があちこちに詰まっている」と認識したのはこのときだ。

 製造業が小売を「機能」として持つ。小売業が生産を「機能」としてもつ。こうして製販が統合させるのがSPAビジネスモデルの本質なのである。

 しかしここで注意したいのは、「機能」として持つことと「物理的に持つ」のは考え方が大いに異なる点だ。例えば、小売機能でいえば、物理的設備は自社ビルなど、「不動産」を持つことであるが、実際は、デベロッパーの中に出店し、家賃を支払って直営(ダイレクトに運営)する。生産も同じで、「機能」として持っているが、「物理的設備」は商社がもっていたり、独立した縫製工場と事業提携をしたり、現実に「物理的設備」を内在化しているわけではない。

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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